神経行動テストバッテリ-による潜在的な神経障害検出と慢性曝露影響評価に関する研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08457135
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 三宅 浩次 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20045363)
• 研究分担者: 松本 博之 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (80106476) ; 岸 玲子 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (80112449)
• キーワード: 神経行動テスト / 神経障害 / 有機溶剤 / 慢性曝露 / 影響評価 / 尿中代謝産物 / トルエン / スチレン

研究概要

ユニットバスを製造している2工場でスチレンを使用している作業者42名(男性38名、女性4名)と対照してスチレンを使用していない53名(男性50名、女性3名)の色覚を測定した。先天色覚異常、糖尿病の者は調査対象に含めなかった。色覚検査にはLanthony低彩度15ヒューテストを使用し、片眼ずつ検査した。検査の定量的な評価はBowmanが提唱した検査方法に従い、Color Confusion Index (CCI)を算出した。
スチレンの曝露群の平均年齢は37.3歳、平均暴露年数は4.8年であった。平均暴露濃度は19.8ppm、平均尿中マンデル酸濃度は0.20g/I、クレアチニン補正値の平均は0.13g/g/creatinineであった。個人暴露濃度の分布を図1に示した。対照群の平均年齢は34.1歳だった。年齢とCCIの関係を図2に示した。暴露群、対照群とも有意な相関関係が認められた。(暴露群r=0.32,p<0.05,対照群r=0.29,p<0.05)。個人暴露濃度と尿中マンデル酸(非補正値、クレアチニン補正値、尿比重補正値)の相関係数を表1に示した。各暴露の指標とCCIの相関係数を表2に示した。各指標とCCIの相関は統計的に有意であった。年齢の影響を取り除くため±3歳以内でマッチした男性35組では、暴露のCCIの平均は1.27(標準偏差0.24)、対照群は1.16(標準偏差0.17)で、統計的に有為差が認められた。(p<0.01)。

研究成果

• [文献書誌] Yuasa J,Kishi R,Eguchi T Harabuchi I,Kawai T.et al: "Investigation on neurotoxicity of occupational exporure to cyclohezane : aneurophysiological study" Occupational and Environmental Medicine. 53巻. 174-179 (1996)
• [文献書誌] 湯浅潤子,岸玲子,原渕泉,江口照子,荒田吉彦,他: "末梢神経伝導速度への年齢および皮膚温の影響 職業性曝露作業者の神経機能評価のための基礎的研究" 産衛誌. 38巻. 158-164 (1996)
• [文献書誌] Yuasa J,Kishi R,Eguchi T,Harabuchi I,Arata Y,etal.: "Study of Urinary Mandelic acdi Concertration and Peripheral Nerve Conduction Among Styrene Workers" American Journal of Industrial Medicine. 30巻. 41-47 (1996)
• [文献書誌] 岸 玲子: "化学物質曝露と精神保健-有機溶剤による影響を中心に-" 産業精神保健. 4巻・3号. 208-216 (1996)
• [文献書誌] 岸 玲子: "鉱山労働者の水銀中毒" Brain Medical. 8巻・2号. 57-62 (1996)
• [文献書誌] 岸 玲子: "産業現場における曝露影響評価の手法 1.モンタリングから本格的な疫学研究へ" 労働の科学. 52巻・1号. 50-54 (1997)