大腸腺腫摘除後の腫瘍発生に対するn-6系PUFAの促進作用、n-3系PUFAの抑制効果を明らかにするため、大腸腺腫・腫瘍の発生・再生をエンドポイント、細胞増殖・細胞周期分析、がん遺伝子・がん抑制遺伝子の変異分析等をサロゲートマーカーないし中間マーカーとした無作為割付臨床試験RCTを計画した。 某大学病院第一内科において大腸腫瘍の内視鏡的摘除を受けた患者で、出血性素因の方・大腸がんの既往がある方・大腸がんの遺伝性素因のある方を除き、臨床試験に対するインフォームドコンセントが得られた方に対して、実験群と対照群に無作為割付を行い、実験群にn-3系PUFAのうちDHA栄養補助剤、α-リノレン酸を多く含むしそ油・しそ油マヨネ-ズの摂取の勧奨を行い、n-6系PUFA(リノール酸等)を多く含む植物油摂取を控える食生活指導を行う。対照群には従来の処置・指導を行い、両群間の大腸腫瘍発生を比較する。なお、サロゲートマーカーないし中間マーカーとして細胞増殖・細胞周期分析、がん遺伝子・がん抑制遺伝子の変異分析も行う。 腫瘍摘除術及び腫瘍発生(性状・形態、腫瘍数、腫瘍サイズ等)の判定は本学内視鏡専門医・病理医が当たるが、摘除・発生の判定はビデオを撮り2専門医が独立に行う。この際、専門医には実験群・対照群の区別は知らせないブラインドの状態で行う。サロゲートマーカーないし中間マーカーとしての細胞増殖・細胞周期分析、がん遺伝子・がん抑制遺伝子の変異分析、コンプライアンスマーカーとして血中脂肪酸の分析も行う。対象者に対する食生活指導は栄養士が行う。 実験中に、もし、出血傾向や悪心・嘔吐等の消化器症状が発生すれば実験を中止する。 サンプルサイズは腫瘍発生頻度と期待される両群間の相対危険度によるが、3〜5年後の対照群腫瘍発生頻度を60%として両群間の相対危険度を2.0、α=0.05(両側)、β=0.20(片側)すると、症例群対照群ペア数は最低50例となるので、現在、このペア数を目標に実験を展開している。 フォローアップ・解析方法は生命表法、カプランマイヤー法、多変量解析などによる。 以上の結果をまとめ、関連学会・関連雑誌などで発表する。 以上のように、当初の計画と大きな変更なく研究を実施した。 なお、本研究費も研究計画にそって適正に執行している。
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