研究概要 |
初年度は,非寒冷作業者を対象に-20℃のF級の冷凍倉庫を用いての寒冷環境が,循環機能,精神作業等に及ぼす影響について検討した。 大学職員および学生,男子11名(平均31±8歳)を対象とした。入庫時の服装は,冷凍倉庫作業者が着用している防寒上着,作業上着,シャツ,防寒ズボン,作業ズボン,下着,防寒手袋,軍手,防寒用靴下,靴下,防寒用長靴,バンダナ,ヘルメットである。衣服条件はこれらすべてを着用した2.5クロー(条件A)と作業上着,作業ズボンを除いた2クロー(条件B)の2条件を設定した。入庫時間は,冷凍倉庫作業者の作業実態調査を考察にして1分,5分,10分3条件とした。 検査項目は,血圧,舌下温,血中・尿中カテコールアミンである。血圧は,入庫前,入庫中1分毎および出庫後15分毎に60分後まで測定を行った。舌下温および血中・尿中カテコールアミンの測定は,入庫前と出庫直後に行った。精神作業として内田クレペリン検査を行った。入庫前,入庫中(10分間の入庫のうち4〜9分目)および出庫15分後にそれぞれ5分間実施した。調査は平成8年11月5日〜14日に行った。 入庫時間5分と10分の場合の収縮期血圧は,時間経過に従って有意な変化が認められた。また入庫時間が長くなるに従い条件Aに比べ条件Bの方が有意に上昇する傾向が認められた。一方,拡張期血圧と心拍数には変化が認められなかった。 血中ノルアドレナリンは入庫前に比べ出庫直後に高くなる傾向が認められ,その傾向は入庫時間が長くなるほど顕著にみられた。入庫時間10分の場合には,条件Aに比べて条件Bで有意な差が認められた。 舌下温では,入庫時間が長いほど入庫前に比べ出庫直後の方が低くなっていた。また条件AよりBの方が入庫前後の差が大きい傾向にあった。 入庫前,入庫中,出庫後のそれぞれ計算数には差が認められなかったが,平均誤答数は条件Bにおいて入庫中に増加する傾向がみられた。
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