昨年度までに実施した沖縄久米島の不眠症に関する一次調査の結果、不眠症と判断された者(不眠症症例)と、非不眠症者の中から性・年齢をマッチさせて選出した対照群19ペアーを対象に、3日間に亘り心拍間隔のモニターとアクチメータによる睡眠モニターを行い、ここで見出された不眠症の生理的特徴を明かにすることを試みた。心拍間隔変動の3つのスペクトル成分については、これまでの研究から、超低周波成分が脳波のδ波成分に強く相関することが示されており、深い睡眠のパラメータとして利用可能であることが示されている。また、アクチメータは体動をモニターするもので、体動の変化から入眠時や中途覚醒あるいは起床時刻が同定でき、総睡眠時間や中途覚醒時間などを算出することが出来る。調査では上記2種のモニターのほか、調査中の睡眠の質についてOSA調査票を用いて調べた。結果、睡眠質を示すOSAのスコアーには不眠症と対照の間に有意な差は見られなかった。また、上記の心拍間隔変動スペクトルの超低周波成分、あるいはアクチメータのデータから知られた各種睡眠時間のパラメータにも有意な差異は認められなかった。この結果は、一次調査で見出された不眠症における睡眠状態が不安定なものであったことによることを示唆している。したがって、これまで見出してきた都内幹線道路沿道における騒音性の不眠症が持続的であったことと対照的であった。夜間の交通騒音に強く関連している不眠症については、約半年おいてその再現性をチェックした結果においても極めてよい相関が見られており、騒音による睡眠への影響には“慣れ"が起こり難いと言われていることを示していると解釈された。
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