研究概要 |
我々は、先にディーゼル排気微粒子(DEP)による喘息様病態の発現にIgE抗体を介するI型アレルギー反応とは異なり、IgG1産生増加を伴う発症機序の存在を示した。このことをさらに確認するために、前年度は、IgE抗体高産生系のBALB/cマウスとIgG1抗体高産生系のC3H/HeマウスにDEPとアレルゲン(OA)を繰り返し気管内投与し、後者のマウスでのみ喘息様病態が発現し、IgG1を介する新しいタイプの喘息様病態の発現機序が存在することを示した。 そこで本年度は、これまでのDEPとOAを気管内投与する実験と、ヒトは現実には排気ガスを呼吸により吸入しているのでマウスにディーゼル排気とOAを吸入させる実験を試みた。なお、本実験では、初めに1mgOAをアラムと共に腹腔内に1回投与する実験系を用いた。DEPとOAを気管内投与した群ではOAのみを気管内投与した群より顕著な好酸球浸潤、粘液産生細胞の増生ならびに気道過敏性の亢進という喘息の基本的病態の全てが発現した。また、DEP+OA群の血漿中の抗原特異的IgEとIgG1の力価は2.2+0.8と47,000+6,400という著しい相違を示していた。 一方、ディーゼル排気(DE)とOAを共に吸入させた実験でも、OA単独吸入実験に比べ、喘息の基本的病態の全てが認められたが、病態の程度は気管内投与実験の場合よりやや緩慢であった。一方、血漿中のIgE値は気管内投与の場合より15倍上昇していたのに対して、IgG1値はほぼ同じ高値を示していた。しかし、アラムを用いる実験系はIgEの関与の有無を明らかにするには適当な実験系ではなかったので、IgEが全く関与しないのかどうかの答えを出すことはできなかった。現在、アラムを用いない吸入実験糸で再検討中である。
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