研究概要 |
兵庫県南部地震において発症し治療中のクラッシュ症候群患者のうち4例の赤血球膜をGC-MSを用いて調べた。4症例の圧迫時間は4時間から12時間で右又は左右下肢の圧挫傷を生じた。いずれも筋肉が高度に挫滅を受けていた。また、入院時の血液検査値のうちCPKは4例中3例が緊急の測定限界値(1973)を越え、GOT、GPTともに高値を示した。第1〜第3例は7週間後には正常に戻ったが第4例はLD,841;BUN,71;Cr,5.6で正常値よりかなり高く、重篤な浮腫、腎不全に陥り人工血液透析を施行されたが創部からの感染により敗血症となり多臓器不全で地震発生4ヶ月後に死亡した。患者試料中から出現した未知のピークのうち、A、B及びCの3つを検索した。保持時間は、A、B及びCの順に22.2分、33.8分と34.4分であった。マススペクトルをとると、Aはm/z292、Bはm/z376、Cはm/z410のフラグメントを有していた。天然に多く存在する末端から9位に二重結合を有する脂肪酸で炭素数26のもの、すなわちcis-17-hexacosenoic acidを合成しBの標準品とした。cis-11-eicosenoic acid及びhexacosenoic acid市販品を標準品とした。標準品と保持時間及び分子の開裂様式が一致したのでAはcis-11-eicosenoic acid(C20:1)、Bはhexacosenoic acid(C26:1)、そしてCはhexacosanoic acidは(C26:0)であると同定した。SIMを用いて定量すると兵庫県南部地震において発症したクラッシュ症候群患者の赤血球膜リン脂質中にC24:1、C26:1、C26:0等極長鎖脂肪酸の蓄積を認めた。
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