血管内皮細胞は種々アゴニストに反応し、内皮由来の弛緩因子(EDRF;現在NOと考えられている)を産生放出し平滑筋細胞のグアニレート サイクラーゼを介してサイクリックGMPを増加させ血管を弛緩させる。エタノール(以下EtOH)はこの内皮依存性の弛緩反応を抑制し、その抑制機序は内皮細胞レベルでのNOの産生・放出抑制作用にあることを明らかにしてきた。一方、最近内皮細胞からNO以外に内皮過分極因子(以下EDHF)も同時に放出され、内皮依存性弛緩反応に関与していることが報告されている。従ってEtOHの内皮依存性弛緩反応の抑制効果はNOだけでなくEDHFを介した反応も抑制している可能性がある。そこで平成八年度に行った研究目的としてラット上腸間膜動脈を用い、EDHFを介した弛緩反応に対するEtOHの効果を検討した。EDHFを介して内皮依存性弛緩反応はNO合成阻害剤のN^G-nitro-L-arginine (L-NNA)に抑制されず、このL-NNA抵抗性弛緩反応は20mMKClにより抑制されることが知られている。我々はそこでこのL-NNA抵抗性弛緩反応に対する、すなわちEDHFを介した弛緩反応に対するEtOHの効果を検討した結果、EtOHは明らかにEDHFを介した弛緩反応を抑制する新たな知見を得た。すなわちEtOHはアゴニスト作用時のNOとEDHFを介したいずれの経路をも介する内皮依存性弛緩反応を抑制することを明らかにした。今後、EDHFを介した反応のいずれの経路でEtOHが抑制しているのかを明らかにしていく計画である。
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