研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)の発症にはウイルスなどの微生物の関与が挙げられている.我々は,臨床的観察に基づき,RAでのヒトパルボウイルスB19(B19)の関与について検索を行った.その結果,以下が判明した. (1)B19はRAの活動病変を持つ関節滑膜組織において陽性であった.すなわち,PCR法により33例中24例にB19DNAが陽性とされた.この中で21例は組織学的に活動性RAとされたが全例でB19DNAが陽性であった.一方RA活動所見の乏しい12例では3例のみ陽性を示した.対照とした変形性膝関節症(OA)10例,関節外傷例10例では滑膜組織でのB19PCRはすべて陰性であった. (2)関節組織でのIn situ hybridization(ISH)によりB19DNA及びRNAを,免疫組織学的方法によりB19蛋白Vp-1の検出を計った.その結果,PCRで陽性を示した活動性RA例に限局して,ISH及びVp-1共に陽性を示した. (3)RA関節滑膜組織を細切後,コラ-ゲナーゼ処理して得た細胞(SVC)あるいはRA由来の骨髄細胞(BMC)を分離チャンバーを用いてB19陰性のBMC,マクロファージ-細胞株U937,THP-1と混合培養した.BMC,U937,THP-1においてVp-1陽性細胞が出現した(感染性B19の証明).これはOA由来のSVCを用いた系ではすべて陽性であった. (4)(3)においてRA由来のSVCと混合培養したマクロファージ-細胞よりIL-6,TNFαの分泌が認められた.これは培養系への抗B19抗体の添加により抑制された. 以上の知見はRAに特異的に認められ,RA発症因子としてのB19の役割を示す.
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