研究概要 |
各HLAを有するPBC患者末梢血より,ミトコンドリア抗原特異的T細胞株あるいはクローンを樹立し、それぞれのエピトープを決定した.T細胞クローンの樹立は,自己抗原提示細胞を各種ミトコンドリア抗原(PDC,OGDC,合成ペプチド)の存在下で培養し、ミトコンドリア抗原の刺激を繰り返すことにより行った. その結果,PBC患者および健常人の末梢血よりミトコンドリア内膜に存在するPDCのE2コンポーネントの163番-176番(PDC-E2 163-176)を,HLADR53拘束性に認識するT細胞クローンの樹立に成功した.また,HLADR53以外のMHC classII分子に拘束されるPDC-E2反応性T細胞のエピトープ解析を行った.その結果,グループ4,5のペプチド混合液に対するT cell lineの樹立に成功した.これらのT cell lineの個々のペプチドに対する増殖反応を検討したところ,グループ4ではPDC-E2 341番-360番,355番-374番,グループ5では373番-392番,392番-411番,499番-466番に反応するT細胞が存在した. これらのT細胞の出現頻度がPBC患者で有意に高いこtoり,これらのT細胞はPBCの病態に関与していると考えられた.またこれらのT細胞はCD4陽性でTh1様タイプであり,EXDK配列を有する他の抗原ペプチドの中にPDC-E2ペプチド特異的T細胞が反応する外来抗原ペプチドが6種類存在した.さらにmolecular mimicryペプチドに特異的なT細胞が自己反応性PDC-E2ペプチド特異的T細胞の活性化を抑制し,自己免疫反応を調節しているという結果を得た.また,T細胞クローンのTCRを解析した結果,超可変領域CDR3はGXG,GXS,RGXGという限られたモチーフが使用されていることが明らかになった(Ichiki et al). 本研究で得られた成果より,PBCの発症に関与する病因エピトープと自己抗原認識機構の一端が分子レベルで明らかになり,他のヒト自己免疫疾患の病態解析や治療法の開発に有用な情報を地峡できるものと思われる。
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