研究概要 |
1)ミトコンドリア抗原のB細胞エピトープ・マッピング PBC患者から得た抗ミトコンドリア抗体を使用し,主要ミトコンドリア抗原であるPDC-E2のB細胞エピトープ・マッピングを行った.エピトープは外側(Lys-46)および内側(Lys-173)リポ酸ドメインのリポ酸を結合したLysineを中心とした領域にマップされた.それぞれN側に存在するAspが抗体との反応にとって重要であった.リポ酸を離断し,さらに再結合して,抗体のPDC-E2抗原との結合に対するリポ酸の影響をみたが,抗体の反応には影響しなかった. 2)ミトコンドリア抗原に対するT細胞クローンの樹立 各HLAを有するPBC患者末梢血より,ミトコンドリア抗原特異的T細胞株あるいはクローンを樹立し,それぞれのエピトープを決定した.T細胞クローンの樹立は,抗原提示細胞を各種ミトコンドリア抗原(PDC,合成ペプチド)の存在下で培養し,ミトコンドリア抗原の刺激を繰り返すことにより行った.その結果,PBC患者および健常人の末梢血よりPDC E2コンポーネントの163-176ペプチド(PDC-E2 163-176)を,HLADR53拘束性に認識するT細胞クローンの樹立に成功した.また,HLADR53以外のMHC classII分子に拘束されるPDC-E2反応性T細胞のエピトープ解析を行った結果,PDC-E2 341-360,355-374,373-392,392-411,449-466ペプチドに反応するTcell lineの樹立に成功した. 3)T細胞エピトープおよびHLA拘束性の同定-PBCにおけるT細胞の認識機構の解析 PDC-E2 163-176反応性T細胞の出現頻度がPBC患者で有意に高いことより,これらのT細胞はPBCの病態に関与していると考えられた.またこれらのT細胞はCD4陽性でThl様タイプであった.これらのT細胞クローンのT細胞レセプターのβ鎖を解析した結果,超可変領域CDR3はGXG,GXS,RGXGという限られたモチーフが使用されていることが明らかになった. 4)蛋白工学的に修飾したペプチドアナログを用いた免疫応答の制御 同定したエピトープのTCR認識部位やMHC結合部位の情報をもとに蛋白工学的に修飾したベプチドを用いてPBCに対する抗原特異的免疫療法の開発をめざした.EXDK配列を有する他の抗原ペプチドの中にPDC-E2ペプチド特異的T細胞が反応する外来抗原ペプチドが6種類存在した.さらにmimicryペプチドに特異的なT細胞が自己反応性PDC-E2ベプチド特異的T細胞の活性化を抑制し,自己免疫反応を調節している可能性が推察された. 本研究で得られた成果より,PBCの発症に関与する病因エピトープと自己抗原認識機構の一端が分子レベルで明らかになり,他のヒト自己免疫疾患の病態解析や治療法の開発に有用な情報を提供できるものと思わ
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