胆汁うっ滞が肝胆道系の免疫機構に影響を与えることは以前より知られていた。また、最近、ウルソデオキシコール酸が自己免疫生肝疾患に有効であることが報告され、胆汁酸と肝胆道系の免疫機構の関連が注目されている。そこで、本研究の要点は、ウルソデオキシコール酸をはじめとした胆汁酸の免疫系に与える影響を、免疫系の機能分子の発現に与える作用などの面から明らかにし、自己免疫生肝疾患の治療法開発に貢献することである。 1)培養肝細胞において主要組織適合抗原クラスI遺伝子発現が胆汁酸によって転写レベルで調節され、かかる胆汁酸の作用は細胞内のプロテインキナーゼC活性化を介しておりその物理化学的特性(hydrophobicityなど)との関連が深いことを明らかにした。 2)ウルソデオキシコール酸の作用機構の分子生物学的解析から、ウルソデオキシコール酸はステロイドホルモン非存在下でその受容体を活性化させ、インターフェロンなどのサイトカインの産生・作用をステロイドと同様に抑制することを明らかにした。ウルソデオキシコール酸によるステロイドホルモン受容体活性化機構に関し、その核移行に与える影響を生細胞下で観察するシステムを構築中である。また、ウルソデオキシコール酸が、ステロイドホルモン受容体と熱ショック蛋白の解離を促進することを、免疫沈降法などを用いて明らかにしつつある。 また、in situ hybridization、in situ PCRを用いて、肝細胞におけるMHCmRNAの発現調節を鋭意検討中である。
|