骨髄移植等後に発症する移入細胞対宿主反応(GVHR)と原発性胆汁性肝硬変(PBC)に見られる所見での共通点の存在からPBCの成因についてGVHRと同様の免疫学的機序が考えられている。そこで、PBCの動物モデルとしてマウスにGVHRを発症させることにより、PBCの免疫学的な病因の解明を行うこと目的とした。研究初年度にあたる本年度はマウスにGVHRを誘導してから1、3、5、14日目に肝臓、脾臓を採取し、各臓器より単核球を分離しmRNAを抽出し、Th1サイトカインであるIL2、IFNγとTh2サイトカインであるIL4、IL10のプライマーを用いてRTPCRを行い、肝病変が形成されるまでのサイトカイン発現の動態をみることに成功した。1脾臓リンパ球では移入後3日目よりIL2、IFNγ、ILA、L10と検索した全てのサイトカインでそのmRNA発現がコントロールに比べ強く認められるようになり、同程度の発現強度で14日目まで持続した。2肝浸潤リンパ球はIL2とIFNγは脾臓と同様に3日目より発現が強くなり、14日目までその傾向は持続した。IL4は14日目で強い発現を認めるようになった。IL10は3日目ではcontrolと変わらず、その後徐々にIL2、IFNγに遅れて発現が上昇しだし、14日目で最強となった。すなわち、肝臓と脾臓では発現してくるサイトカインの動態が異なっており肝臓ではTh1サイトカインが最初に発現したのちにTh2サイトカインが遅れて発現してくるのである。ヒトでは解析が困難である病態誘導時期における肝浸潤リンパ球のサイトカイン発現動態を明らかにしたことが今回の新たな知見である。今後はさらにFACSを用いてリンパ球サブセットを分離し、mRNAレベルのみならず、細胞内蛋白レベルでもサイトカインの発現動態を検討してゆく予定である。
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