研究概要 |
本研究では、胃上皮細胞から分泌される増殖調節因子等の生理活性物質の同定を行ない、これらの因子の増殖、分化、修復や形態形成などに関する生理的役割を検討することを目的としている。我々は、ラット胃上皮細胞RGM-1を大型培養フラスコ中で培養し、さらに無血清培養液中で3-5日間培養することにより条件培養液を調製した。その条件培養液は、分子濾過法により濃縮され、液体クロマトグラフ法などを用いて精製された。その結果、正常ラットの胃上皮細胞RGM-1の条件培養液からIGF-II,des-1-IGF-II,IGF binding protein-2,SPARC(Secreted Protein Acidic and Rich in Cysteine),β2-microglobulin,cystatin C,tissue inhibitor of metalloproteinases-II等が同定された。このことから、胃上皮細胞の増殖や修復にもこれらの蛋白質因子が関与している可能性が示唆された。 また最近、我々は、細胞外pH変化を指標としてウシ胃抽出液からG蛋白質共役型オーファンAPJレセプターに結合する内因性リガンドを単離同定し、アペリン(apelin)と命名した(Tatemoto et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.1998)。アペリンは、36個のアミノ酸からペプチドで、アミノ酸配列はLVQPRGPRSGPGPWQGGRRKFRRQRPRLSHKGPMPFである。我々は、アペリンに対する免疫抗体を作製して、この新規生理活性物質が胃に多量に存在し、また、脂肪組織、脳、心臓等でも産生されることを見いだした。また我々は、この胃由来の新しい消化管ホルモンの生理的な役割を検討した結果、アペリンが強力な血圧降下作用を有することを発見した。我々は、アぺリンの増殖、分化、修復や形態形成などに関する生理的役割も検討中である。
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