研究課題/領域番号 |
08457167
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林 紀夫 大阪大学, 医学部, 助教授 (00144478)
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研究分担者 |
考藤 達哉 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
三田 英治 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
笠原 彰紀 大阪大学, 医学部・附属病院, 助教授 (70214286)
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キーワード | C型肝炎 / アポトーシス / Fas抗原 / B7-1(CD80) / 細胞障害性Tリンパ球 / HLA / リボザイム / TGF-α1 |
研究概要 |
C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus、以下HCV)における肝細胞障害では、細胞障害性T細胞(cytotoxic T lymphocytes、以下CTL)が中心的な役割を果たす。C型肝炎肝組織におけるB7-1(CD80)及びFas抗原の発現動態を検討すると、肝炎の活動性とCD80およびFas抗原の発現動態の間に正の相関関係が認められた。HCV core抗原発現肝細胞近傍でCD80とFas抗原はほぼ同一の肝細胞に表出され、C型慢性肝炎における肝細胞障害の発症機序として、HCV感染がCD80およびFas抗原の発現を誘導し、CD80を副シグナルとして抗原情報を提供されたCTLがFas陽性肝細胞にFasリガンドを介してアポトーシスを誘導する可能性が示唆された。 HCVが感染していながら肝機能障害を認めない症例が存在し、CTLの活性化までの経路に個体差が存在する。そこで、慢性肝炎から肝硬変へと病変が進行してゆく群と無症候性に経過する群における個体差をHLAハプロタイプの観点から検討した。この結果、前者にはHLA B54-DRB1^*0405-DQB1^*04011なるハプロタイプが、後者にはHLA B44-DRB1^*1302-DQB1^*0604なるハプロタイプがこれらをもたない症例に比し有意に高率であった。このことより、C型慢性肝炎症例においてHLAを介した抗原提示能の差異が細胞障害の重症度を規定する一つの因子であることが示された。 またインターフェロン抵抗性C型肝炎に対する新しい治療法を開発するために、HCV RNA特異的hammerhead ribozymeを作成しその有用性を検討すると、ribozymeはHCV RNAを切断し、HCV蛋白の翻訳をも抑制することより、C型肝炎に対する新しい遺伝子治療法として応用できる可能性が示唆された。 C型肝炎では内因性TGF-β1がupregulateされているが、内因性TGF-β1がHCV抗原特異的CTLの誘導、障害活性の増強を阻害しており、至適量のIL-2と抗TGF-β1抗体の添加により高活性のCTLが得られることをin vitro(ex vivo)の培養系で明らかにした。また、樹状細胞を抗原呈示細胞として用いることにより、HCV非感染者より高活性のHCV特異的CTLを誘導した。これらCTL誘導システムは他のウイルス感染症や腫瘍に対する治療法の開発に応用できると考えられた。
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