研究概要 |
[背景と目的]潰瘍性大腸炎の炎症性粘膜に活性化好酸球が多数浸潤し、好酸球顆粒蛋白の一つであるeosinophil cationic protein(ECP)を遊離し粘膜障害を惹起している可能性がある。しかし、ECPの組織障害機構は不明であり、このことを明らかにするために、まづECPの抽出精製を行い純度の高いECPの抽出精製に成功した。次に、腸管平滑筋の収縮作用と収縮機構を追求した。[方法]1.ECP精製:Peterson(1988)らの方法に準じて抽出精製した。(1)前処置:白血球を分離、粉砕し顆粒を分離、20倍に濃縮、(2)カラム精製:(1)分子ふるいクロマトグラフィー(Superdex75)、(2)イオン交換クロマトグラフィ一(SOURCE),キレートクロマトグラフィー(Zn-Chelating Sepharose)の精製過程で行った。2.腸管平滑筋収縮作用:(1)モルモット小腸条片をマグヌス装置に懸垂し、0.6gの負荷をかけた実験系に10μg/lのECPを加え等長性に小腸片の収縮性を測定した。(2)アトロピンによる収縮抑制実験を行った。[結果]1.ECP精製:最終的に3805μg/l〜4292μg/lの活性をもったECPを抽出精製した。電気泳動で16kD〜21.4kDの分子領域に存在した活性値の高いECPのピークを獲得することができた。2.腸管平滑筋収縮作用:(1)10μg/l濃度のECPによって一過性の収縮を認めた。これはアセチルコリン収縮高の13%〜16%の収縮に相当した。(2)ECPによる収縮は一部アトロピンで抑制された。したがってECPがアセチルコリン受容体に結合するのか、又はコリン作動性神経に働いてアセチルコリン遊離を促進し収縮を起こしているのかが考えられた。[結語]ECPに腸管平滑筋の収縮作用があることが明らかになった最初の成績である。また、ECPは潰瘍性大腸炎の病態生理に強く関わっている物質であると考えられた。
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