ヘリコバクター・ピロリ感染と胃癌との関連-スナネズミ持続感染モデルを用いた検討-

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08457170
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 大分医科大学
• 研究代表者: 藤岡 利生 大分医科大学, 医学部, 助教授 (90145368)
• 研究分担者: 西園 晃 大分医科大学, 医学部, 助手 (70218155) ; 久保田 利博 大分医科大学, 医学部, 助手 (30244172) ; 村上 和成 大分医科大学, 医学部, 助手 (00239485)
• キーワード: Helicobacter pylori / スナネズミ / 持続感染モデル / MNNG / 胃癌

研究概要

1.予備実験の結果:本実験に先立ち、スナネズミにHelicobacter pylori標準株(ATCC43504)を接種後、N-Methyl-N'-Nitro-N-Nitrosoguanidine (MNNG)および食塩水投与による胃粘膜の経時的変化を病理組織学的に検討した。
(1)H.pylori感染後の変化:H.pylori接種後1ヶ月から前庭部胃粘膜の固有層および粘膜下層に好中球およびリンパ球を主体とした炎症細胞浸潤を認め、これらの変化は経時的に増強し、6ヶ月後には胃粘膜の萎縮性変化およびgoblet cell metaplasia を認め、1年後にはhyperplasiaあるいはdysplasiaの所見を呈した。
(2)MNNG投与による変化:MNNGを50mg/mlの濃度に溶解し、飲料水として20週間投与し、経時的に胃粘膜の病理組織学的変化を検討した。投与20後には胃粘膜の著明な菲薄化と胃腺構造の破壊を認めた。
(3)食塩水投与による変化:2%食塩水を20週間連日投与し、経時的に胃粘膜の病理組織学的変化を検討した。食塩水の投与のみでは、胃粘膜に病理組織学的変化を認めなかった。
(4)H.pylori持続感染の確認:H.pylori接種後、MNNGや食塩水の持続投与を行ってもH.pyloriはスナネズミの胃粘膜に持続感染し得ることがELISA法による抗HP IgGの抗体価の測定や、組織学的鏡顕法(ギムザ染色)によって確認された。
2.本実験の経過:以上の予備実験の結果をふまえて、MNNG投与群、食塩水投与群、MNNG+食塩水投与群および発癌物質非投与群の4群をさらにH.pylori感染群と非感染群に分けて、合計8群で経時的変化を観察している。実験開始後6ヶ月の検討では、予備実験で見られた種々の変化が観察されているが、現時点で癌の発生を認めたものは無い。本実験では、2年間にわたって病理組織学的変化を経時的に観察する予定である。

研究成果

• [文献書誌] 本田昇司・藤岡利生: "実験動物よりみたHelicobacter pyloriの傷害機序" G.I.Research. 4(6). 83-87 (1996)
• [文献書誌] Toshio Fujioka et al: "Sofalcone for treatment of Helicobacter pylori infection" Journal of Gastroenterology. 31. 56-58 (1996)
• [文献書誌] Kaoru Kodama Toshio Fujioka et al: "Expression of vacuolationg ytotoxin in clinical isolates of H.pylori" Journal of Gastroenterology. 31. 9-11 (1996)
• [文献書誌] Reiji Kodama Toshio Fujioka et al: "Helicobacter pylori infection delays the hesling of acetic acid-induced gastric ulcer in Japanese monkeys." Journal of Gastroenterology and Hepatology. 11. 1097-1102 (1996)
• [文献書誌] 藤岡利生 ほか: "H・pylori感染症の除菌療法" 医学のあゆみ. 179(1). 103-107 (1996)
• [文献書誌] 藤岡利生 ほか: "Helicobacter pyloriに対するMueller Hinton半流動培地を用いた新MIC測定法の有用性" 日本化学療法学会雑誌. 44(12). 867-873 (1996)
• [文献書誌] 藤岡利生: "Helicobacter pyloriと胃炎・胃癌" 医学書院, 223 (1996)
• [文献書誌] 藤岡利生: "Helicobacter pyloriと胃癌(Annual Review,消化器)" 中外医学社, 338 (1997)