研究概要 |
1.対象および方法:スナネズミ(MGS/Sea)にH.pylori標準株(ATCC43504)を経口的に胃内に接種し,感染モデルを作製した。本菌接種5週後から、50mg/Lの濃度に溶解したN-Methyl-N′-Nitro-N-Nitrosoguanidine(MNNG)を自由飲水の方法で20週間投与した。H.pylori感染の有無、MNNG投与の有無により,normal control群,H.pylori群,MNNG群およびH.pylori+MNNG群の4群を設定し,接種後16週,24週および52週後に屠殺し,胃の全割標本を用いて組織学的に検討した。 2.結 果:(1)非腫瘍部の病理組織学的変化;幽門腺領域においては,H.pylori群では感染の初期から粘膜の過形成を主体とした変化を認め,後期ではこれに加えて小弯側粘膜の萎縮およびgoblet cell metaplasiaの発生を認めた。MNNG群では胃粘膜上皮および胃腺の脱落による萎縮様の変化であった。H.pylori+MNNG群ではこれらを加えた変化が観察された。また全経過において,normal control群では組織学的変化を認めなかった。胃底腺領域では,萎縮の進展に伴い幽門腺化生が感染の後期に認められた。(2)胃癌の発生;実験開始後16週では,全ての群で胃癌の発生を認めなかった。24週後には,H.pylori+MNNG群の1匹の腺胃に中分化型腺癌の発生を認めた。52週後には,MNNG群で17匹中3匹(17.6%)に胃癌の発生を認めた。H.pyloei+MNNG群では,15匹中で実験終了までH.pyloriが持続陽性であった6匹のうち4匹(66.7%)に胃癌の発生を認めた。これらの結果を総合すると,H.pylori+MNNG群のうち実験終了時までH.pyloriの持続感染が確認された群では(5/13:38.4%),MNNG単独群(3/27:11.1%)と比較して高率にスナネズミの腺胃に胃癌の発生を認めた(p<0.05).また、normal control群およびH.pylori群では胃癌の発生は認めなかった。 3.まとめ:以上の結果から動物実験においてもH.pylori感染が胃癌の発生に強く関与していることが示唆された。
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