研究概要 |
1.成熟型HGFに対する特異抗体とHGFの前駆体であるプロHGFを認識する特異抗体を用いて、肝障害および胃粘膜障害時における成熟型HGFの発現が臓器特異的であるか否かを検討した。肝障害モデルはニホンザルに四塩化炭素:オリーブ油(1:1)混合液を16ml/kg経鼻胃管投与して作成した。また胃粘膜障害モデルはニホンザルに0.6N塩酸を1ml/kg経鼻胃管投与して作成した。 結果 1)サルに四塩化炭素を投与し、0,6,12,24,48時間後に屠殺し、肝、腎、肺 胃の各組織によりHGFタンパクを抽出し、ELISAで組織中HGF濃度を測定すると、肝で24時間をピークに経時的に組織中HGF濃度が上昇した。一方腎では組織中HGFは軽度の上昇にとどまり、肺では低値のまま変化はみられず胃ではほとんど検出されなかった。2種類のHGFに対する特異抗体を用いたwestern blotでは、四塩化炭素を投与後肝において成熟型HGFが著しく強く発現しており、腎、肺では一本鎖のプロHGFのみが検出され、成熟型HGFはみられなかった。 2)胃粘膜障害サルでは塩酸投与後6時間で胃組織中HGFは増加し、3.8ng/g組織重量に達し、その後低下した。western blotでは、プロHGFとともに成熟型HGFの発現が増加した。 結論 肝障害時には肝で成熟型HGFが強く発現し、胃粘膜障害時には胃組織中で成熟型HGFが検出されたことより、成熟型HGFは障害臓器特異的に発現し、組織修復に関与している可能性が示唆された。
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