研究概要 |
本研究では,センス-アンチセンスペプチドの概念から,ターゲットとする蛋白の構造を変化させその生物活性をブロックするペプチドを設計する方法として,分子内アンチセンスHomology Boxをモチーフとしたアンチセンスペプチド設計プログラム(Nature Med 1 : 894-901, 1995)を改良,その有用性をEGF受容体など増殖因子受容体を実例として検討,成長因子とその受容体の結合を阻害するペプチドを作成することを目的としている.従来の分子内のHomology Boxを利用した分析を行った結果から,PSGT---KLLL, LAALCA---LEEKKV, LYENT---LSNYGなど,EGF受容体の構造を変化しうるペプチドを合成した.胃粘膜上皮細胞の培養系であるRGM1がEGFにより用量依存的に増殖することから,その生物活性を検討した結果,現在のところその生物活性はペプチドによりかなり異なることが判明しつつある.さらに,今回はHomology Boxを利用しない新しいアンチセンスペプチド設計法の開発に着手した.すなわち,EGF受容体のリガンド結合部位と考えられる2つのシステインリッチなドメインの中間部をターゲットし,理論的に考えられるすべてのアンチセンスペプチドの組み合わせから,ターゲットとする蛋白の構造を変化させる可能性が最も高いペプチドをコンピュタ-で選出する試みを行った.その結果,理論的にはよりよいアンチセンスペプチドをコンピュタ-算出できる環境を得ることができ,その有用性を検討を進めている.さらには,このEGF受容体のリガンドであるEGF, TGF-α, amphiregulin, heparin binding EGF like growth factor, Betacellulinの構造をアンチセンスHomology Boxの観点で分析した結果,それぞれ複数のHomology Boxが存在し,リガンド自身も十分ターゲットとなりうることが判明した.このことからHomology Boxをモチーフとしたペプチド,さらには,リガンドの結合部位(第3ループ)をターゲットにしたアンチセンスペプチドをコンピュタ-算出する試みも進行中である.
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