研究課題/領域番号 |
08457173
|
研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 俊一 岩手医科大学, 医学部, 教授 (10048275)
|
研究分担者 |
滝川 康裕 岩手医科大学, 医学部, 助手 (50254751)
加藤 章信 岩手医科大学, 医学部, 講師 (50177424)
鈴木 一幸 岩手医科大学, 医学部, 助教授 (00137499)
|
キーワード | 定量的神経機能検査 / 潜在性肝性脳症 / ポジトロン断層法 / 脳内糖代謝 / BZ受容体 / 日内行動リズム / インターフェロン |
研究概要 |
(1)肝性脳症診断用コンピュータシステムの開発検討 健常者26名と脳症のない肝硬変症例30例で、新たに開発したコンピュータシステムによる定量的精神神経機能検査(8種類)を施行し、対照と肝硬変につき比較した。その結果、加齢により成績は低下し、同一年齢では、健常者に比し肝硬変では検査成績が低下する傾向がある。しかしその傾向は検査間で異なり、どのような検査組合わせが診断に有用か検討中である。 (2)ポジトロン断層法を用いた脳内糖代謝の検討 肝硬変症例を潜在性肝性脳症(11例)と非潜在性肝性脳症(5例)に分け、脳内各部位の^<18>F-FDGを用いたポジトロン断層法による糖代謝量を比較した。脳内糖代謝量(mg/min/100g)は対照(6.8±0.3)に比し、非潜在性肝性脳症(6.2±1.4)では低下がないが、潜在性肝性脳症(3.8±0.5)では低下し、前頭葉、側頭葉、後頭葉、大脳基底核で有意(p<0.05)であった。脳内糖代謝量はWAIS成人知能検査の積木検査(r=0.448,p=0.082)、符号検査(r=0.587,p=0.017)と相関し、精神神経機能に脳内ブドウ糖代謝量が関与している可能性が示唆された。 (3)肝性脳症に対する治療 ^<11>C-Flumazenilを用いた脳内BZ受容体動態についてはBZ受容体測定剤である炭素-11標識fulimazenilの合成をfulimazenilの脱メチル体であるRo 15-5528を用いて試み、高い純度で合成が可能であり、BZ受容体測定研究の遂行が可能な状態である。 (4)潜在性肝性脳症の病態と予後 脳症のない非アルコール性肝硬変22例に、精神神経機能検査(WAIS成人知能検査の積木・符号検査)と電気生理学的検査(聴覚誘発電位、脳波成分分析)により、潜在性肝性脳症の有病率と顕性化率を検討した。その結果、有病率は肝硬変症の60%前後と推定された。顕性化率は初回診断時より12ヵ月以内で約40%であった。今後、潜在性肝性脳症の統一した診断基準の設定や病態の解析がさらに必要である。
|