研究課題/領域番号 |
08457173
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
消化器内科学
|
研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 俊一 岩手医科大学, 医学部, 教授 (10048275)
|
研究分担者 |
滝川 康裕 岩手医科大学, 医学部, 助手 (50254751)
加藤 章信 岩手医科大学, 医学部, 講師 (50177424)
鈴木 一幸 岩手医科大学, 医学部, 助教授 (00137499)
|
研究期間 (年度) |
1996 – 1998
|
キーワード | 潜在性肝性脳症 / 肝性脳症診断用コンピュータシステム / ポジトロン断層法 / 脳内糖代謝 / 磁気共鳴画像(MRI) / 磁気共鳴分析法(MRS) / 淡蒼球信号強度 / glutamine, myoinositol |
研究概要 |
(1) 肝性脳症診断用コンピュータシステムの開発検討 新たに開発したコンピュータシステムによる定量的精神神経機能検査を対照と肝硬変に施行した。健常者の検討では加齢により機能検査成績は低下することから、年齢別の正常値を設定した。肝硬変の40〜60%の症例で正常値以下の成績を示し、潜在性肝性脳症診断のスクリーニング検査となりうる可能性が示された。 (2) ポジトロン断層法を用いた脳内糖代謝の検討 肝硬変症例を潜在性肝性脳症と非潜在性肝性脳症に分け、脳内各部位の2-(^<18>F)-fluoro-2-deoxy-D-glucoseを用いたポジトロン断層法による糖代謝量を検討した。脳内糖代謝量は対照に比し、非潜在性肝性脳症では低下がないが、潜在性肝性脳症では低下し、前頭葉、側頭葉、後頭葉、大脳基底核で有意(p<0.05)であった。脳内糖代謝量はWAIS成人知能検査と相関し潜在性肝性脳症の発症に脳内糖代謝量が関与すると考えられた。 (3) 磁気共鳴画像(MRI)と磁気共鳴分析法(MRS)を用いた脳内物質代謝の検討 顕性脳症のない肝硬変と健常者にMRIとMRSを施行し、淡蒼球信号強度とglutamine、myoinositolの信号強度を測定し肝の重症度、血液アンモニアとの関連を検討した。その結果、顕性脳症のない肝硬変でも顕性脳症と同様に健常者に比し、MRIで淡蒼球信号強度は高値で、血液マンガン濃度と正の相関(p<0.01)がみられた。MRSではglutamine高値、myoinositol低値,p<0.05)を認め、血液アンモニアとmyoinositolとは有意の負の相関(p<0.01)を、グルタミンとは有意の正の相関(p<0.01)を認めた。また肝の重症度の進行に伴いmyoinositolは減少、淡蒼球信号強度とglutamineは増加した。従って、肝性脳症でみられる脳内物質代謝異常は顕性脳症のない肝硬変でも存在し肝の重症度、血液アンモニア、マンガンなどを反映すると考えられた。 (4) 潜在性肝性脳症の病態と予後 脳症のない非アルコール性肝硬変に、精神神経機能検査と電気生理学的検査(聴覚誘発電位、脳波成分分析)を施行し、潜在性肝性脳症の有病率と顕性化率を検討した。その結果、有病率は肝硬変症の60%前後と推定された。顕性化率は初回診断時より12カ月以内で約40%であった。今後、コンピュータシステムによる定量的精神神経機能検査により潜在性肝性脳症のスクリーニングを行い、病態の解析がさらに必要である。
|