研究課題/領域番号 |
08457194
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
神経内科学
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
錫村 明生 奈良県立医科大学, 神経内科, 助教授 (50196896)
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研究分担者 |
澤田 誠 藤田保健衛生大学, 総医研, 助教授 (10187297)
田丸 司 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (50295797)
高〓 哲也 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60022836)
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研究期間 (年度) |
1996 – 1998
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キーワード | ミクログリア / サイトカイン / グリア / 多発性硬化症 / AIDS / IL-13 / glia |
研究概要 |
本研究の目的はミクログリアの機能を解析することにより、神経系の病態の機序を探り治療法の開発に寄与することである。今回のプロジェクトの特徴はミクログリアをさらに細分化し、サブタイプ別に機能を検索する点である。今回得られた知見をまとめると、 1) M-CSF欠損op/opマウス由来のGM-CSF依存性ミクログリアと正常マウス由来のミクログリアのIL-12産生能、IL-12受容体の表現を検索したところ、IL-12 p40の産生は両方に認められたが、GM-CSF依存性ミクログリアではp35の産生がなく機能的IL-12が産生されなかった。すなわち、p35とp40のへテロダイマーの機能的IL-12を産生するものと、産生しないかまたは正常のIL-12と拮抗するIL-12 p40を産生するサブタイプが存在することが確かめられた。今回の成績はミクログリアの双方向性の機能の存在を示唆している。また、ミクログリアはIL-12と同様に1型ヘルパーT細胞を誘導するIL-18をも産生することも明らかにした。これらの事実はミクログリアが脳内での免疫調節に重要な働きをすることを示している。 2) 種々のphosphodiesterase阻害薬のミクログリアのサイトカイン産生に対する作用を検索した。すべてのタイプのphosphodiesterase阻害薬はミクログリアのサイトカイン産生、とくにTNFalphaなどの炎症性サイトカイン産生を抑制することが明らかになった。一部のものはIL-10の産生を高めることも示され、免疫性神経疾患の治療に有用と考えられた。実際に、これらの薬剤は、マウスAIDSウィルス(LP-BM5)のグリア細胞への感染、および多発性硬化症のモデルである実験的アレルギー性脳脊髄炎の発症を抑制することも確かめられ、将来、脱髄のみならず、種々の神経難病の治療法開発に向けて有用な知見と考えられた。一方、GM-CSF依存性のタイプIIミクログリアはTNFやNOを産生しないことも明らかにした。 3) IL-13がほかの増殖刺激との共同作用で、ミクログリアを多核巨細胞に変化させることを突き止めた。多核巨細胞は結核性病変とともにHIV脳症でも認められる病理学的変化であり、これが2型ヘルパーT細胞(Th2)由来のサイトカインにより形成されることから、これらの病変部位でのTh2の重要性が示唆された。神経系でのIL-13産生がないことも明らかにした。 上記の成果は、ミクログリアの機能の研究さらにはおのおののサブタイプの研究により神経系での炎症、変性など種々の疾患の病態にアプローチできる可能性を示唆している。
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