研究概要 |
Laminin-2欠損先天性筋ジストロフィーにおける末梢神経髄鞘形成不全の機序を解明するために,我々は末梢神経laminin-2の機能を解析中である.本年度はα-dystroglycanがシュワン細胞膜の全く新しいタイプのlaminin-2ならびにagrinの受容体であることを示した.Laminin-2とagrinは末梢神経内膜基底膜に発現し,シュワン細胞膜のα-dystroglycanとco-localizeしていた.末梢神経内在性のlaminin-2ならびにagrinはシュワン細胞α-dystroglycanとCa^<2+>依存性に結合した.つまりdystroglycanはシュワン細胞膜のlaminin-2とagrinのdual receptorである.α-DystroglycanはHNK-1抗原を持つムチン型糖蛋白であったが,laminin-2ならびにagrinとの結合にはα-dystroglycan糖鎖のシアル化が重要であった.これらの結果はα-dystroglycanとlaminin-2の相互作用がシュワン細胞による髄鞘形成に重要な役割を果たす可能性を示唆する.さて,α-dystroglycanが実際に生体内で細胞接着因子として機能しているかはまだ不明である.本年度,我々はこの点も検討した.免疫細胞学,蛋白生化学的手法によりラットシュワン細胞腫瘍RT4の細胞表面にはα-,β-dystroglycanよりなるdystroglycan複合体が発現していることが確認された.Lamininをコートした培養皿でRT4細胞を培養すると細胞はすぐに紡垂状になり,皿底に接着した.しかしここにα-dystroglycanとlamininの結合を阻害する特異抗体IIH6,EDTA,その他同結合の阻害剤を入れると細胞は円形のままで皿底に接着しなかった.以上の結果はdystroglycan複合体が実際に細胞接着因子として機能することを示すものである.
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