研究概要 |
モノクロナール抗体F9が認識するとされているインターロイキン-3(IL-3)受容体関連抗原(IL-3RAA)のcDNAをクローニングし,IL-3RAAを強く発現している神経細胞でのIL-3情報伝達機構を明らかにするのが,本研究の目的である。 IL-3RAAは,中枢神経系において,神経細胞に広範に分布し,我々が報告したIL-3が神経栄養因子として作用するコリン作動性神経細胞も強く発現している一つである。これは,IL-3受容体のα,β鎖とは異なり,F9はチロシン・リン酸化IL-3受容体をむしろ強く認識する。IL-3RAAは,リガンドと直接結合するsubunitではなく,結合後の細胞内シグナル伝達の極初期に関係する物質と推測される。 マウス・コリン作動性神経細胞株SN6をIL-3で刺激後,膜成分を2次元電気泳動し、F9によるウェスタンブロットにて,約45kDaの蛋白質を精製し、2ヶ所の部分アミノ酸配列を決定した。これらのアミノ酸配列から,オリゴヌクレオチドプライマーを作成し,SN6のmRNAをtemplateとしたRT-PCRでcDNAを増巾後,内側に位置するプライマーで更にnested PCR増巾した。得られたDNA断片をTベクター,pUC18に挿入してクローニングし,DNA塩基配列を決定した。5種類のcDNA断片が得られ,シークエンスしたが,1部は既知遺伝子であるが,全てにおいて,F9の認識したアミノ酸配列は今のところ,見いだされていない。 既知遺伝子でないcDNAクローンをプローブとして,SN6のmRNAのノーザンブロッド解析で、確かに1.6kbと3.0kbのmRNAを検出できる。今,さらにPCR産物のクローニング,シークエンスを精力的に進めているのと同時に,SN6をIL-3刺激した際に,IL-3受容体α,β鎖に集合する分子種を免疫沈降,ウェスタンプロットで解析を進めている。
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