研究概要 |
心不全進展過程にエンドセリン(ET)-1の病態生理学的意義をみるために、イヌに高頻度右室刺激による心不全を作製して、ET-A受容体拮抗薬(FR139317)、ET-B受容体拮抗薬(RES-701-1)を投与して、心不全で亢進している神経体液因子である血漿ノルエピネフリン(NE)、レニン、アルドステロン、ET-1、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)濃度に対する各ET受容体を介するモジュレーションを検討した。その結果ET-A受容体拮抗薬は用量依存性に全身血圧、肺動脈楔入圧を低下、腎血流量、尿量の増加とともに、ANP濃度を低下させたが他の神経体液因子には影響を及ぼさなかった。それに対してET-B受容体拮抗薬は全身血圧、肺動脈楔入圧を増加させ、ET-1濃度を2倍に増加、アルドステロン濃度を低下させたが、ANP,NEには影響がなかった。このことはET-1は副腎からのアルドステロン分泌をET-B受容体を介して刺激していることを示す(Wada A, et al.J Am Coll Cardiol 1997;30:1385-1392)。 ET-A受容体拮抗薬が心不全の予後を延長することが報告されているが、ET-A/ET-B受容体拮抗薬(TAK-044)は心不全において亢進しているレニン・アンジオテンシン系を抑制することからET-A受容体より有効である可能性がある。心不全イヌにおいて検討したところ、ET-A受容体拮抗薬もET-A/ET-B受容体拮抗薬とも心内圧を下げ、尿中ナトリウム排泄を増加した。さらにET-A/ET-B受容体拮抗薬はアルドステロン濃度も下げ、漫性心不全には後者の有用性が示された(Ohnishi M,Wada A, et al.Cardiovasc Res to be submitted)。
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