研究概要 |
【目的】近年、われわれの研究により、心筋症の病因としてC型肝炎ウイルス(HCV)感染の重要性が明らかになった。拡張型心筋症53例中8例(15.1%)、肥大型心筋症66例中11例(16.7%)において血清HCV抗体が陽性であった。これは虚血性心疾患40例中1例(2.5%)に比し有意に高頻度であった(p<0.05)。HCV抗体陽性であった拡張型心筋症8例において、7例は心不全、1例は心室頻拍、3例は急性心筋炎が疑われる病歴を有していた。また、5例の心筋標本からHCVゲノムのプラス鎖RNAを認め、このうち3例ではマイナス鎖RNAを認めた。一方、HCV抗体陽性であった肥大型心筋症11例においては、剖検心1例および生検心筋5例の6例前列の心筋標本からウイルスRNAを認め、このうち2例では血中HCVRNAが検出されなかった。また、多施設の共同研究としてわが国おける心筋症におけるHCV感染およびHCV抗体陽性者の臨床像に関するアンケート調査を行った結果、拡張型心筋症619例中37例、(6.0%)、肥大型心筋症585例中61例(10.4%)において血清HCV抗体が陽性であった。一方、HCV抗体陽性者は11,210例中604例(5.4%)に見られた。このHCV抗体陽性例の臨床診断名は不整脈、高血圧症をはじめとして多くの疾患でみられ、HCV感染は心筋症意外の心疾患にも関与している可能性が示唆された。HCV抗体陽性例における心電図異常は62.8%にみられ、不整脈、伝導障害が46.6%と最も頻度が高く、左室肥大が65.9%、非対象中隔肥大が28.9%にみられ、また駆出率の低下も34.4%にみられた。これらの結果から、HCV感染は心筋症に加え他の心異常をきたす可能性が示唆された。
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