ラット大動脈平滑筋細胞の初代培養細胞を用いて、イオン動態制御機構と細胞周期の関係を検討した。また、細胞周期は、細胞周期特異的抵抗原に対する単クローナル抗体の多重免疫蛍光染色によって、単一細胞レベルで同定した。また、ホールセルパッチクランプ法によってカルシウムチャネル活性を測定し、フラ2法によって細胞質カルシウム濃度を測定した。24時間の無血清培養によって、G_0期細胞を得た。血管平滑筋細胞および内皮細胞の細胞周期とカルシウムイオン制御について以下の結果を得た。 1.G_0期とM期の細胞は、全てLタイプカルシウムチャネルのみを発現していた。G_1期とS期の細胞は、LとTの両タイプのカルシウムチャネルを発現していた。すなわち、Tタイプカルシウムチャネルは、G_1期とS期の細胞にのみ発現していた。Lタイプカルシウムチャネルの密度は、G_1期≧S期>G_0期≧M期であった。Tタイプカルシウムチャネルの密度は、S期>G_1期であった。これらの事より、細胞周期進行によって、カルシウムチャネルの発現が変化していることがわかった。 2.UTPは、P2U受容体の活性化を介して、血管平滑筋細胞の細胞質カルシウム濃度を増加させ、プログレッション増殖因子として作用する。すなわち、G_0期細胞の細胞周期には、全く効果がないが、G_1期の細胞の細胞周期をさらにS期・M期へ進行させることができる。 3.UTPは、P2U受容体の活性化を介して、血管内皮細胞の細胞質カルシウム濃度を増加させ、血管弛緩因子を産生させる。
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