“アドレノメデュリン(AM)"と“PAMP"は1993年にヒト褐色細胞腫より発見された共通の前駆体より生合成される強力な血管拡張性の降圧ペプチドである。AM・PAMPは副腎髄質以外の生体内の幅広い組織で生合成され、新しい生理活性ペプチドとして循環調節を始め生体内で重要な機能を果たしている可能性が示唆されている。本研究では新規生理活性ペプチドであるAMとPAMPの生体内での役割を解明し、病態生理学的意義を解明するための研究を行っている。 AMの慢性投与すると、高血圧自然発症ラット(SHR)および正常血圧ラット(WKY)投与後2日目より、降圧が認められ2週間安定した降圧を示した。さらに、WKYにおいては、血漿レニン活性が有意に抑制されていたが、SHRでは血漿レニンの抑制は見られなかった。また、AMの新たな作用として、AMは心筋の蛋白合成を著明に抑制することが明らかにした。AMは心筋細胞で生合成されオートクリンやパラクリン的にレニンアンジオテンシン系に拮抗する形で、心筋肥大等の病態に関与している可能性が示された。現在、AMの蛋白合成抑制の機序やAM受容体との関連について検討している。 ヒト血中を循環しているAM免疫活性は成熟型AM(mAM)が合成される前の中間体のAM-Gly(iAM)であることを証明した。さらに、mAMの測定系を確立、心不全患者の血中AM免疫活性を検討したところ、mAMは心不全の重症度に従い有意に増加した。本結果を元に、mAMとtotalAM(mAM+iAM)の両方を無抽出で測定可能な測定キットの開発がされた。今後各種疾患でのmAMとtotalAMの血中濃度が明らかにされてくると思われる。 一方PAMPに関しては、今までに知られていた20個のアミノ酸よりなるPAMP[1-20](PAMP-20)以外に降圧活性を有したPAMP[9-20](PAMP-12)を単離構造決定した。PAMPの生合成機序として、生体内ではPAMP-20以外にPAMP-12が新たな降圧ペプチドとして生合成されていることが示唆され興味深い。
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