研究概要 |
1.Wiskott-Aldrich症候群におけるWASP遺伝子異変 5症例の遺伝子解析を施行した.症例1および2は第1エクソンにてGの1塩基欠失,症例3では第2エクソンTCA→TAA(stop),症例4では第10エクソンCGA→TGA(stop),症例5では第10エクソン^<1119>Cの1塩基欠失が認められ,それぞれ63,63,53,320,444アミノ酸のtruncated WASPとして読みとられていた. 2.保因者診断 症例1と2はPCR-SSCP法,症例4はXhol消化,症例5はPCR産物の直接塩基配列決定にて保因者診断が可能であった. 3.患者・正常人・各種血液細胞株におけるWASPmRNAの発見 正常人末梢血単核球・多核球分画の双方にmRNAの発見を認めた.一方患者5名はいずれもイ-ザンブロット法上検出感度以下の発現であった.白血病細胞株では全例にWASPの発現を見たが,線維芽細胞には発現は認められなかった. 4.WASPに対する抗体作成と蛋白発現の検討 WASPに対するポリクローナル及びモノクローナル抗体(5A5)を作成した.WAS患者では検出感度以下のWASPの発見しか認められなかった. 5.フローサイトメーターによる細胞内WASP蛋白検出法の確立 EBV-LCLを使用している限りにおいては,患者では明らかに健常人由来LCLと異なりWASPの発現は認められなかった.しかし末梢血ではいづれの分画にても,非特異的反応が強く診断上の使用には一層の検討を要した. 6.WASに対する骨髄移植症例の検討 骨髄移植後の患者末梢血にWASPが発現したことを確認した.その後EBVによるリンパ球増殖症を合併し,ドナーリンパ球輸注にて治癒せしめた症例を報告した.
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