研究概要 |
乳児白血病の約70%にMLL遺伝子の再構成がみられ、この遺伝子が発症と進展に重要な役割を有する。我々はこれまでt(5;6;11)-乳児白血症の切断点のクローニングより6q27座位するAF6遺伝子と、5q12に座位するAF-5α遺伝子を単離し、これらの遺伝子の性状を検討してきた。今年度は、t(11;16)(q23;p13)のMLL遺伝子の相手遺伝子の単離を行った。近年t(8;16)(p12;p13)-白血病の16p13により、CBP遺伝子が単離された(Nature Genet.)。我々はこのCBP遺伝子がt(11;16)に関連する遺伝子である可能性を考え、CBPcDNAをプローブにしてサザンブロッティングとノーザンブロッティングを行ったところ、正常とサイズの異なるバンドがみられた。MLLとCBP遺伝子のプライマーを設定し、RT-PCR法を行ったところ、2例でMLL-CBPキメラcDNAが検出でき、t(11;16)の16p13の相手がCBP遺伝子であることを明らかにした(Blood 89;3945,1997)。種々の組織での発現をみると、CBPはほとんどの組織で発現がみられた。さらにマウスの32Dcl 3細胞に遺伝子導入により強制発現をさせ、種々の実験を行う予定である。さらに現在保有しているt(10;11),t(11;22),t(5;11),t(11;17)等の白血病細胞を用いてcDNAイブラリーを作り、MLL遺伝子の再構成を用いて相手遺伝子の単離を試みたところ、前2核型より相手遺伝子の単離に成功した。とれた遺伝子はいずれも癌抑制遺伝子の範疇の遺伝子であり、その内の2つは細胞の転写の際に必須な重要な遺伝子であった。種々の組織での発現等、その産物の性状の詳細な検討を通じて、造血組織の発生・分化におけるこの遺伝子の役割と白血病発症における役割を解明している。
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