抗体産生制御によるアレルギー疾患治療の基礎的検討

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08457223
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 眞弓 光文 京都大学, 医学研究科, 助教授 (70135581)
• キーワード: アレルギー / 抗体産生 / Tリンパ球 / Bリンパ球 / シグナル伝達 / 細胞死 / アポトーシス

研究概要

抗体産生を人為的に制御することによりアレルギー疾患を治療する可能性を明らかにするために、(A)T細胞抗原受容器を介する刺激によるT細胞死およびその制御、(B)B細胞抗原受容器を介する刺激によるB細胞死におけるIL-7レセプターを介する刺激の役割、について検討した。研究(A)では、(1)活性化されたヒト抹消血T細胞はT細胞抗原受容器を介する刺激によりFAS-FASリガンド依存的に細胞死を来すこと、(2)このT細胞死はマクロファージとの細胞接触により抑制されること、(3)マクロファージによるT細胞死の抑制作用はFASやFASリガンドの発現低下によるのではなく、FAS-FASリガンドの反応後の細胞内シグナル伝達の変化によると考えられることが明らかとなった。研究(B)では、(1)EBウイルス形質転換ヒトB細胞株にIL-7レセプター遺伝子を導入することに成功し、(2)この遺伝子導入により機能的なIL-7レセプターが細胞表面に発現されること、(3)このIL-7レセプターを介する刺激により、細胞内シグナル伝達分子Jak-1,Jak-3のチロシンリン酸化や細胞接着分子の発現増加が認められることが明らかとなり、B細胞の抗原レセプターを介する細胞死のシグナル伝達にIL-7レセプターを介するシグナルがどのような役割を果たすかを検討する来年度の基盤が確立された。これらの研究結果は、抗原特異的なBリンパ球やTリンパ球の増殖・活性化・細胞死を人為的に調節するための研究に重要な知見を与えるものであった。

研究成果

• [文献書誌] M Mayumi: "Signal transduction pathway of interleukin-4 and interleukin-13 in human B cells derived from X-linked severe combined immunodeficiency's patients" Journal of Biological Chemistry. 271. 619-622 (1996)
• [文献書誌] M Mayumi: "Allergic march in children : atopic dermatitis in Japanese children with bronchial asthma." Allergology International. 45. 145-149 (1996)
• [文献書誌] M Mayumi: "Negative signaling in B-cells by surface immunoglobulins" Journal of Allergy and Clinical Immunology. 98・6. S238-S247 (1996)
• [文献書誌] M Mayumi: "Development of bronchial asthma in Japanese chileren with atopic dermatitis.Results of one-year follow-up study." Allergology International. (発表予定).
• [文献書誌] M Mayumi: "X-linked severe combined immunodeficiency with γδT cells." Acta Pediatrica Japonica. (発表予定).
• [文献書誌] 眞弓光文: "X-SCIDと共通γ鎖" 最新医学. 51・10. 66-70 (1996)
• [文献書誌] 眞弓光文(分担執筆): "食品アレルギー対策ハンドブック" 株式会社サイエンスフォーラム, 491 (1996)
• [文献書誌] 眞弓光文(分担執筆): "アレルギーとサイトカイン" 株式会社医薬ジャーナル社, 255 (1996)