気管支喘息などの小児アレルギー疾患では、ダニなどのアレルゲンに対するIgE抗体の産生亢進が重要な役割を果たしている。アレルゲンに対する特異IgE抗体の産生を人為的に制御することによるアレルギー疾患治療の可能性について、B細胞レベル、T細胞レベルでの基礎的研究を行い、以下の成果を得た。 1.表面免疫グロブリンを介する抗原シグナルは単独ではB細胞をアポトーシスにより死滅させる。このB細胞死はB細胞上に発現されるCD40分子と活性化T細胞上に発現されるCD40リガンド分子とが反応することにより阻害されるが、この過程には細胞接着分子LFA-1/ICAM-1システムが活性化されて起こるB細胞同士または他の免疫細胞との細胞接着が関与していることを明らかにした。 2.共通γ鎖を欠くX染色体連鎖重症復合免疫不全症患者由来B細胞株にIL-7レセプターα鎖を遺伝子導入した細胞株を作製し、IL-7レセプターを介するシグナル伝達における共通γ鎖の役割の解析を可能にした。 3.活性化T細胞は抗原レセプターの架橋によりFas/Fasリガンド系が作動して死滅する。この細胞死はマクロファージとの細胞接着により阻害されるが、この機序はFas/Fasリガンド系を介する細胞死のシグナル伝達が阻害されることによることが示唆された。 4.ナイーブヘルパーT細胞からのIgE産生を誘導するTh2ヘルパーT細胞の選択的分化には、抗原提示細胞であるマクロファージが活性化されたときに産生するプロスタグランディンE2がIL-4と共に重要な役割を果たすことを明らかにした。また、IL-7も抗原刺激なしにナイーブヘルパーT細胞の増殖・活性化とIL-4産生能を誘導しうることを明らかにした。 これらの研究成果は人為的な抗体産生制御によるアレルギー疾患治療の研究にとって有用な知見であった。
|