神経芽腫の自然退縮の機序を分化の観点から検討し以下の知見を得た。 1.神経芽腫組織内でのSchwann様細胞、および神経節細胞が腫瘍細胞由来である可能性を検討した。 1)AMeX固定パラフィン切片をS-100抗体で免疫染色(TRITCで検出)した後、1番染色体のセントロメア近傍Probe(pUC1.77)を用いてFISH(Fluorescence in situhybridization)を行った。 結果:PUC1.77シグナルが3つと異数性を示す腫瘍において、TRITC陽性のschwann様細胞は2つのシグナルを持ち、腫瘍由来の可能性は否定的であった。 2)神経節細胞は核が大型のため切片上でのFISHによる検討は困難なため、スタンプ標本を用いた蛍光顕微測光法による核DNA量の測定を行った。 結果:核小体が明瞭で大型の核を持つ細胞集団(神経節細胞と判断)でnear-triploidyを示す症例があり、腫瘍内の神経節細胞には腫瘍細胞に由来するものが含まれていることが示唆された。 2.神経芽腫のneuronalな分化におけるneurotrophic peptideであるmidkine(MK)、およびpleiotrophin(PTN)の関与を検討した。 1)神経芽種細胞株(16株)でのそれぞれの発現をNorthern blottingで検討した。 結果:MKは全ての神経芽腫細胞株で発現を認めたのに対し、PTNは発現を認めなかった。 2)神経芽腫細胞株SK-N-SHをE5166(retinoic acid analogue)で分化誘導しMKの発現を検討した。 結果:形態的にneuronalな分化が認められ、day1-3においてMKの有意な発現増加を認めた(P<0.001)。MK神経芽腫分化への関与が示唆された。
|