研究概要 |
(目的)小児進行神経芽腫において生体内の腫瘍細胞を異物遺伝子移入により異物化して、宿主の抗腫瘍免疫応答を賦活化し腫瘍細胞を撲滅する癌免疫遺伝子治療を開発する。そのための基礎的研究として、マウス神経芽腫に異物化遺伝子としてアロクラスIMHC抗原遺伝子を移入して、宿主の免疫応答増強効果およびその治療効果を検討した。 (方法と結果)1.A/Jマウス(H-2Kk)由来神経芽腫株C-1300の高腫瘍形成能を持つsubclone S3に、H-2Kb遺伝子移入したclone S3Kb4C3とneorを移入したclone S3neo4を作製した。A/Jマウス側腹部に腫瘍細胞を皮下接種した時の腫瘍拒絶率は、S3、S3neo4、S3Kb4C3でそれぞれ0/15、0/10、5/20であった。S3Kb4C3を接種したマウスの生存率は他より有意に延長した(P<0.05)。また、S3Kb4C3を接種したマウスは親株S3も拒絶した。 2.S3Kb4C3を拒絶したマウスの脾細胞をin vitroで再刺激したものをエフェクターとして^<51>Cr release assayを行った。その結果、同系由来の線維肉腫に対しては細胞障害活性を認めなかったが、S3、S3Kb4C3に対して強い細胞障害活性を示した。 3.A/JマウスをINF-γ処理S3Kb4C3の腹腔内投与によりH-2Kbで免疫し、同時にS3を皮下接種した。その後、腫瘍径が数mmになった時点でHVJ-liposomeを用いて腫瘍内にH-2Kb遺伝子を注入した。その結果、腫瘍内にH-2Kb遺伝子の発現がmRNA、蛋白レベルで確認された。そして、HVJ-liposomeのみ、HVJ-liposome^+control DNA,HVJ-liposome^+H-2Kb発現ベクターを注入した時の腫瘍退縮率は、それぞれ1/8、0/10、5/10であった。生存率(50日)はHVJ-liposome^+H-2Kb発現ベクター群が50%で、HVJ-liposome^+control DNA群の0%に比し有意に改善していた(p<0.05)。 (結論)マウス神経芽腫に対してアロクラスIMHC遺伝子移入による免疫遺伝子治療は有効であると考えられた。今後は、ヒト神経芽腫に対する応用について検討を進める。
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