22番染色体q11.1-q11.2の部分異数性によって発生するDiGeorge症候群(DGS)・円錐動脈幹異常顔貌症候群(CAFS)(モノソミー)および猫目症候群(テトラソミー)の原因遺伝子群を追究した。別途遂行していた22番染色体の全シーケンシングプロジェクトの結果も利用して以下の成果を得た。 (1)猫目症候群領域はセントロメア特有の多種類の反復配列と複数染色体共通配列に富むため、解析は困難を極めた。NF1様配列、ALD様配列、von Willebrand因子偽遺伝子等多数の偽遺伝子を見出した。しかし、その中から、CESK1、GAB2LのcDNAをクローニングした。これらは、長腕上で最もセントロメア側に位置する遺伝子である。これらの遺伝子に関しては、現在も解析を継続している。 (2)22q11.2に存在する7箇所の22番特異的低頻度反復領域(LCR22)の完全構造解析を行なった。BCRやGGTなどの(偽)遺伝子を同定するとともに、複雑な反復構造を解明した。これらのLCR22は、本研究の対象とする疾患で見られる染色体異常の切断点となる可能性が大きい。 (3)DGS/CAFSの原因遺伝子領域(LCR22-2と-3の間)から、新規遺伝子DGCR8を発見した。DGCR8はゲノム上で約35kb(14エキソン)を占め、773アミノ酸をコードする。ノーザンブロット解析により4.5kbの転写産物の発現がほとんどの組織で認められた。推定アミノ酸配列から1つのWWモチーフと2つの近接する2重鎖RNA結合モチーフ(dsrm)の存在が予測された。マウスにおけるin situハイブリダイゼーション法の結果、心臓血管、胸腺、口蓋原基など、この疾患の症状を示す組織で特異的な発現が観察できた。これらのことより、DGCR8はDGS/CAFSの原因遺伝子候補の一つであると考えられる。
|