研究概要 |
昨年度の研究により、乾癬表皮では、表皮細胞の増殖亢進にともないターンオーバー時間が短縮し、ロリクリンやフィラグリンといった遅れて発現する角化マーカーが間にあわない状況で、辺縁帯の形成が起こり、結果的にインボルクリンその他の早期発現タンパクが乾癬表皮辺縁体の主な構成要素になることが示唆された(Iizuka et al;Br J Dermatol135:433-438,1996;Ishida-Yamamoto,Iizuka et al;J Histochem Cytochem 44:167-175,1996)。本年度の研究においては主にインボルクリンの転写発現の機構が検討され、インボルクリンはprotein kinase C-αとηの2つのisoformにより転写増強を受けることが示された(Takahashi,Iizuka et al.J Invest Dermatol(in press)).われわれはすでに乾癬皮疹部ではインボルクリンmRNAが増加していること(Takahashi,Iizuka et al:Br J Dermatol 134:1065-1069,1996)、インボルクリン発現がprotein kinase C活性化因子であるTPAにより増強されること(Takahashi&Iizuka,J Invest Dermatol 100:10-15,1993)を報告しているが、今回の結果は、protein kinase Cの活性化が乾癬病変部で起こっているという報告とあわせ、乾癬表皮におけるprotein kinase Cの関与を強く示唆するものである。また、これは同時に、辺縁帯関連タンパクとしては初めて、特異的なprotein kinase C isozymeによる転写制御機構を示すものである。われわれはさらにシスタチンAについても昨年のTPAによる活性化の報告(Takahashi,Iizuka et al J Invest Dermatol 108:843-847,1997)に引続き、本年度は遺伝子クローニングを行い、その過程でprotein kinase C-αによる転写増強作用を証明した(Takahashi,Iizuka et al:投稿中)。これはインボルクリンの結果とあわせ、特異的protein kinase Cを介する角化関連タンパク転写制御が、表皮においては比較的一般的な制御機構であることを示唆している。これら角化関連タンパクの制御機構と、乾癬の表皮構築維持機構(Iizuka et al J Invest Dermatol 109:806-810,1997)との関連の解明が当面の課題である。
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