研究概要 |
インボルクリン発現に関与するprotein kinase C isozymeの同定を行った。その結果、protein kinase C-α,ηの関与が示された(Takahashi,Iizuka et al;J Invest Dermatol 110:218-225,1998)。乾癬においてはprotein kinase C-αの活性化が考えられているため、正常ではη、増殖亢進ではαを介する制御機構が想定される。シスタチンAについては、protein kinase C-αの関与が示され、5´上流領域の-272から-278に位置するTPA response elementが同定された。本elementはc-JunとcFos、およびJunDとc-Fosに反応し、転写の増強を示す(Takahashi,Iizuka et al;J BiolChem273:17375-17380,1998)。 ロリクリンframeshift mutationによるprogressive symmetric erythrokeratodermaは錯角化と顆粒層の共存によって特徴づけられる(Ishida-Yamamoto,Iizuka et al;Am J Hum Genet 61:581-589,1997)。同じく錯角化の見られる乾癬とLoricrin keratodermaの角化機構における異同は重要な問題である(Ishida-Yamamoto,Iizuka;Exp Dermatol 7:1-10,1998)。本年度の研究により、ロリクリンの異常による核内集積が、核の分解を抑制している可能性が示唆された。さらにフィラグリンについてもprofilaggrinのN-terminal domainが、核内に集積することを見い出した(Ishida-Yamamoto,Iizuka et al;Lab Invest 78:1245-1253,1998)。また、これらの研究の過程で、辺縁帯形成に関与するtransglutaminase 1 knockout mouseの解析の共同研究を行い、核の遺残についての検討を行った(Matsuki,Ishida-Yamamot,Iizuka et al;Proc Natl Acad Sci USA95:1044-1049,1998)。 乾癬は通常、顆粒層の欠損で特徴づけられるが、現実の乾癬においては、かなりの確率で顆粒層プラスの乾癬が存在する(Iizuka,Ishida-Yamamoto et al;Br J Dermatol 135:433-438,1996)。顆粒層プラス、マイナスの両者はターンオーバー時間の差により発現されることが数理解析により示された(Iizuka,Ishida-Yamamoto et al;J Invest Dermatol 109:806-810,1997)。乾癬の終末角化の発動時期は、顆粒層プラス、マイナスにより、インボルクリン、フィラグリン、ロリクリン、Sprrなど、角化マーカーごとに厳密に制御されていることが想定される。
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