本研究はNMDA受容体イオンチャンネル部位へのリガンド接近メカニズムに着目し、open channel stateとclosed channel stateの識別およびその機能変化を捉えることが可能なインビボリガンドの開発を目指している。イオンチャンネル開口時に対して選択的な高親和性のNMDA受容体拮抗剤をリ-ド化合物としてPETでの使用を目的として^<18>F標識化合物の合成法開発を行った。ジチエニルエチレンがDiels-Alder付加したアゾニアアントラセンを基本骨格とし、チオフェンの2位にフルオロエチル基を導入したものとアゾニアアントラセンの8位にフルオロエトキシ基を導入したものを設計した。ジチオフェンを有するジェノフィル体は、アセチルチオフェンを用いることにより容易に得られる非対称の3級アルコール体を経て合成可能であった。さらにDiels-Alderによりヒドロキシ体へと誘導し、水酸基をMorphoDastで直接フッ素化してフルオロエチル置換体を得た。ジエノフィルをフッ素化した後、Diels Alder反応を行ってフルオロエチル体を得る新規合成法を計画した。標識合成では短半減期の^<18>Fを用いるため、新規合成経路でのDiels-Alder反応は短時間で進行させる必要があり、溶媒の検討を行ったところ、トリフルオロエタノール中でのDiels-Alder反応が大幅に加速されることが分かった。さらに、マイクロウエイブ波を活用すれば、さらに加速効果がえられることを見出した。また、8-ヒドロキシ体は、容易にフルオロエトキシ体へと変換できた。^<18>F標識フルオロエチル体は、担体無添加の^<18>Fイオンを用いる新規合成経路により得られた。これにより新規合成経路は有用な合成法であることが示され、^<18>F標識化にDiels-Alder反応を利用した例は知られていないことから、このアプローチはより複雑な^<18>F標識化合物合成の可能性を開いたものといえる。^<18>F標識フルオロエトキシ体は、非標識体と同様な方法で8-ヒドロキシ体から放射化学的に高純度で得られた。
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