フッ素(19F)は、プロトンと共鳴周波数も近く、検出感度も高く、次世代のMRの核種として非常に有望である、フッ素は、生体内には殆ど存在しない原子である特性を生かせば、フッ素のイメージング及びスペクトルは、投与した薬剤のみの特性を示すことから、フッ素薬剤の集積、代謝が非侵襲的に容易に検討出来る。 そこで、我々は先ず第一に入手したフッ素pH probeを使用して腫瘍の細胞外pHを19F-MRSから測定すると同時に同部位の31P-MRスペクトルから細胞内pHを測定した。その結果、細胞・外pH共に腫瘍の増殖と共に低下するが、細胞外pHの方が細胞内より低く、より遅れて低下することが明らかとなった。これは、腫瘍細胞内での癌の代謝の後、老廃物が細胞外へ排出されるためと思われる。よって、腫瘍組織のpHが明らかとなることにより、腫瘍の浸潤・悪性度、虚血部位の広がり・程度の診断に有益な情報を与える。 また、本研究費で購入したサーフェイスプローブに試作の新コイルで検討を行い、円錐型の新コイル-2丸底容器が最も感度良く、かつマウスの臓器の固定が非常に安定し有効であった。 よって、この新コイル-2を使用して、フッ素抗癌剤5-FUの坦癌マウスにおける肝、腎、脳、腫瘍での代謝過程を19F-MRスペクトルで検討した。その結果、肝での5-FUの分解過程が明らかになった。また、腫瘍部での5-FUの集積およびその分解は肝より少なく、より長く腫瘍部に残留することが明らかとなった。 また、5-FUの前駆薬剤であるフッ素抗癌剤のテガフールのマウスにおける肝、腎、脳で19F-MRスペクトルから、5-FUに比較し、脳での代謝が遅いこと及び殆ど分解されないことから脳腫瘍に適しているものと思われた。 これらの実験に関し、19F-MRIによるイメージングを実施する予定であったが、きれいな画像の得られる19F-用コイルの作成が困難であったため、実現出来なかった点が非常に残念であった。
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