研究概要 |
第一に,照射1年後に25%皮膚短縮をもたらす等効果線量は,低LET炭素線では分割回数の増加とともに増大したが,高LET(100keV/μm)では分割に依存しなかった。早期皮膚反応と晩期皮膚短縮に関する炭素線のRBE(対ガンマ線)は,分割回数が多くなると類似していた.皮層のEGRレセプター蛋白質をwestern法にて調べたが,定量的解析を行うことは困難であると結論した.第二に,ヒト由来の正常細胞及びがん細胞を用いて、炭素イオンビーム(13と77keV/μm)と200kVのX線照射による細胞死とクロマチン切断誘発との相関性を調べた。その結果,細胞死と修復されないクロマチン切断誘発は,放射線の線質に依らず良く相関することが判り,未成熟染色体凝集法による修復されないクロマチン切断検出法が細胞障害の測定に適応可能であると,示唆された.第三に,ヒト単球系白血病細胞株THP-1細胞をX線照射するとTNFの産生が増加し,TNFはNFkBを活性化した.また放射線によるNFkBの活性化は抗TNF中和抗体により阻害された.核抽出物によりgel-shift法を行うとNFkBの活性化が認められた.これらの結果から,放射線によるNFkBの活性化には内因性のTNFの産生が必要であり,またTNFの産生は放射線による遺伝子発現において重要な役割を示している事が示された.第四に,ヒトケラチノサイト(SV40形質転換細胞)にX線2Gyおよび10Gy照射後3時間培養すると,HGF受容体数はそれぞれ1.5倍と2.1倍に増加した.放射線線量依存性は明確では無かった.外因性のHGF添加(10と50ng/ml)はX線照射された細胞を増殖促進させたが,コロニー形成能には影響しなかった.
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