研究概要 |
・膵内分泌細胞の分化誘導を検討する細胞系の確立 膵内分泌細胞は膵導管に存在する共通前駆細胞から分化してくると考えられている。我々はこの共通前駆細胞からインスリン産生細胞への分化過程をin vitroで検討することができる培養細胞系の確立を目指してきた。その結果,ラット膵腺房由来の腫瘍細胞株AR42Jを用いることにより,分化過程が検討可能であることを見いだした。AR42J細胞はアミラーゼを産生・分泌する細胞であるが,同時にシナプトフィジンやニューロフィラメントなどの神経細胞マーカーを産生する点において膵共通前駆細胞に類似した性質をもつと考えられる。我々はこのAR42J細胞から2種類のサブクローンを取ることに成功した。そのうちの一つAR42J-B20細胞は分化誘導因子アクチビンとEGFファミリーに属する因子ベータセルリンとともに72時間培養するとインスリン産生細胞へと分化するのである。分化した細胞はGLUT2やグルコキナーゼ遺伝子を発現し,膵β細胞に特徴的なATP感受性Kチャネルを発現し,トルブタミドやGLP-1,カルバコールに反応してインスリン分泌が増加する。第二のサブクローンであるAR42J-B13細胞はアクチビンと肝細胞増殖因子(HGF)により同様にインスリン産生細胞へと分化する。分化したAR42J-B13細胞も同様にしてトルブタミド,GLP-1,カルバコールに反応してインスリン分泌が増加する。こうしてインスリン産生細胞の分化過程を解析するよい実験系が確立されたことから,今後分化誘導機構の詳細を検討していくことが可能になった。
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