マクロファージのスカベンジャー受容体と動脈硬化発症機構の研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08457258
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 児玉 龍彦 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (90170266)
• 研究分担者: 和田 洋一郎 東京大学, 医学部, 医員 ; 中島 淳 東京大学, 医学部, 医員 ; 油谷 浩幸 東京大学, 医学部, 助手 (10202657)
• キーワード: スカベンジャー受容体 / ノックアウトマウス / マクロファージ / コレステロール / 動脈硬化 / 酸素ラジカル

研究概要

マクロファージのスカベンジャー受容体の動脈硬化発症への関与と生理的役割の解明のため、樹立したスカベンジャー受容体ノックアウトマウスを用いて次の結果をえた.
(1)スカベンジャー受容体の動脈硬化への関与 アポEノックアウトマウスにおける動脈硬化サイズはスカベンジャー受容体欠損により60%減少し、スカベンジャー受容体の関与が始めて直接的に証明された.LDL受容体ノックアウトマウスでは有意な差はみられずスカベンジャー受容体の関与はリポ蛋白の種類、マクロファージにおけるコレステロール代謝の変化によりことなることがわかった.
(2)マクロファージの接着はスカベンジャー受容体欠損により大きく遅延することがわかった.これは腹腔マクロファージにはスカベンジャー受容体が発現されており、培養ディッシュなどへの初期接着はスカベンジャー受容体が重要であるが、培養時間の経過とともにβ2インテグリンなどが重要になってくるためと思われた.
(3)マクロファージの酸化LDLやアセチルLDLの取り込みは低下するのに対し、血液中からりクリアランスはスカベンジャー受容体ノックアウトマウスでは変化しないことがわかった.これらの結果をまとめるとLDLの変性は血管壁でおこり、血液中で変性したLDLはマクロファージ以外の細胞でおこっている可能性が高いことを示す.

研究成果

• [文献書誌] Suzuki H,Kodama T et al.: "Resistance to atherosclerosis and susceptibility to infection in scavenger receptor knockout mice" Nature. (in press). (1997)
• [文献書誌] Suzuki H,Kodama T,et al.: "Germ-line contribution of embryonic stem cells in chimeric mice:Influence of karyotype and in vitro differentiation ability" Exp.Anim.46. 17-23 (1997)
• [文献書誌] Nakajima A,Kodama T et al.: "Specific clonal T cell accumulation in intestinal lesions of Crohn's disease." J Immunol. 157. 5683-88 (1996)
• [文献書誌] Sato R,kodama T et al.: "Sterol dependent transcriptional regulation of sterol regulatory element binding protein 2." J Biol Chem. 271. 26461-4 (1996)
• [文献書誌] Mori T,Kodama T,et al.: "Localization of advanced glycation end products of maillard reaction in bovine tissue and their endocytosis by macrophage scavenger receptors" EXP.MoL.Pathol.63. 135-152 (1995)
• [文献書誌] Goto S,Kodama T.et al.: "Species specificity in the blood cholesterol-lowering effect of YM-16638" British Journal of Pharmacology. 118. 174-8 (1996)