チロシン残基特異脱リン酸化酵素SH-PTP2(SHP2)は成長因子により活性化され、脱リン酸化酵素であるにも関わらず細胞内信号伝達を刺激することがをれわれのグループを含め報告されてきた。インスリン刺激においてもSHP2はIRS-1と結合し活性化されるとされたが、IRS-1同様にインスリン刺激によりリン酸化され結合するチロシンリン酸化タンパク質(pp115)を我々は見いだした。我々は既にこのタンパク質のCHO細胞(chinese hamster ovary cell)におけるアミノ酸配列の一部を明らかにしていた。このタンパク質と類似のタンパク質が他のグループより報告されたため、このリン酸化タンパク質のチロシンリン酸化部位のチロシンをフェニールアラニンに替え、チロシンリン酸化部位欠失遺伝子を作製した。 我々はpp115が細胞膜に存在するために、このタンパク質の効果はSHP2を細胞膜付近に誘導し、やはり細胞膜に結合しているRasに作用を及ぼしている可能性を考えている。pp115の構造から判明するであろうチロシンリン酸化部位のチロシンをフェニールアラニンに替えることでチロシンリン酸化部位欠失pp115遺伝子を作製するべく検討中である。 別の90kDaのチロシンリン酸化タンパクがSH-PTP2に結合しておりこのタンパク質についてもcDNAクローニングおよびインスリン作用の細胞内信号伝達における意義について研究中である。このリン酸化タンパク質はインスリン刺激により脱リン酸化されるがこの脱リン酸化はSH-PTP2によるものではなかった。しかしチロシンリン酸化はPDGFの刺激ではあまり反応が見られずインスリンに比較的特異の反応であることが示唆された。
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