研究課題
基盤研究(B)
我々はアデノウイルスベクターを用い、また種々感染方法を工夫し、分化した脂肪細胞(3T3L1細胞)への組み替えアデノウイルスを用いた遺伝子導入発現を世界に先駆けて成功させた。この方法を用い、脂肪細胞にPI3キナーゼの活性ユニットであるp110サブユニットを過剰発現させ、PI3キナーゼの活性化、特に細胞内での活性化が糖輸送促進に重要であることを明らかにした。また、PI3キナーゼの活性化を阻害するdominant negativeなp85サブユニットを発現させると、インスリンによる糖輸送促進効果ならびにGLUT4のトランスロケーションへの効果は著明に抑制され、インスリンによる糖輸送促進機構におけるPI3キナーゼ活性化の重要性がさらに確認された。さらに、Rasの活性化がインスリンによる糖輸送促進に関わるとの説が提唱されていたが、dominant negativeなRasの変異体を発現させてインスリンによるRasの活性化を阻止しても糖輸送促進効果は障害されず、3T3L1脂肪細胞ではインスリンによる急性の糖輸送促進機構にRas活性化は関与しないことを明らかにした。糖輸送担体の細胞内局在機構についても解析を進めた。これは糖輸送担体のトランスロケーション機構とも関わりうる。細胞内ソーテイングを決定するモチーフを解明するために、GLUT5とGLUT1の間で様々なキメラを作製し、ヒト消化管上皮細胞のモデルであるCaco-2細胞に発現させ検討した。膜貫通部位6と7の間にある細胞内ループ部分がGLUT1であればbasolateral側に、GLUT5であればapical側に局在し、Caco-2細胞におけるGLUT1とGLUT5のソーテイングには細胞内ループ部分が重要な役割を演じていると考えられた。
すべて その他
すべて 文献書誌 (14件)