アドレノメデュリン及びPAMPの発現,分泌調節とシグナル伝達機序の解明

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08457269
• 研究機関: 国立循環器病センター
• 研究代表者: 寒川 賢治 国立循環器病センター研究所, 生化学部, 部長 (00112417)
• キーワード: アドレノメデュリン(AM) / PAMP / 降圧ペプチド / 遺伝子発現調節 / 敗血症ショック / イヌAM前駆体構造 / 血管 / 消化管

研究概要

本年度は、アドレノメデュリン(AM)の遺伝子発現および分泌機序解明の一環として、大型実験動物としてのイヌAMについて、その前駆体cDNAクローニングと敗血症ショックにおけるAM遺伝子発現について検討した。
イヌAM前駆体は188個のアミノ酸で構成されており、イヌAMはヒトAMとの間に2個のアミノ酸置換が認められたが高い相同性を示し、PAMPも18位のアミノ酸が置換しているほかはヒトPAMPと同配列であった。PAMPは、ヒト、ブタ、ラットにおいてC-末端側の12残基は同一配列であり、この12残基のPAMP-12(PAMP[12-20])は、内在性に存在し活性も有することが最近明らかにしている。イヌにおいてのみ18位にアミノ酸置換が見られることは、PAMPの構造・活性を考える上で興味深い。
正常イヌにおけるAMの遺伝子は、血管系では大動脈や大静脈で高く、肺動静脈や肝静脈、門脈、冠動脈などでも比較的強い発現が認められた。脳神経系では全体に発現量が低いが、大脳、視床、橋、延髄、脊髄などで比較的強かった。消化管では、上部消化管(食道、胃)および下部消化管(結腸、直腸)に強く発現していた。充実性臓器では、腎臓、副腎が同程度に強く、肝臓、脾臓、ではやや弱い発現量を示した。
敗血症モデルでは、血管では動静脈を問わず増加し、消化管(十二指腸、空腸、回腸)では著明な増加が認められた。実質臓器では、平均して約1.5倍の増加を認め、脳内では視床下部、脊髄で増加が見られた。
敗血症性ショックモデルにおける全身の主要な血管での発現増加は、敗血症に伴う低血圧の原因の一端をAMが担う可能性を示唆する。さらに、種々の臓器でAM遺伝子の発現に変化が認められ、またその広範な発現部位を考えると、ショックにおけるAMの作用も多岐にわたることが予想される。

研究成果

• [文献書誌] Ikenouchi K.,et al.: "Negative inotropic effect of adrenomedullin in isolated adult rabbit cardiac ventricular myocytes." Circulation. 95. 2318-2324 (1997)
• [文献書誌] Sumimoto T.,et al.: "Plasma adrenomedullin concentrations and cardiac and arterial hypertrophy in hypertension." Hypertension. 30. 741-745 (1997)
• [文献書誌] Nishio K,et al.: "Elevated plasma levels of adrenomedullin correlate with relaxation of vascular tone in patients with septic shock." Crit.Care Med.25. 935-957 (1997)
• [文献書誌] Shirai M.,et al.: "Vasodilator effects of adrenomedullin on small pulmonary arteries and veins in anaesthetized cats." Br.J.Pharmacol.121. 679-686 (1997)
• [文献書誌] Khan A.I.,et al.: "Effect of chronically infused adrenomedullin in two-kidney,one-clip hypertensive rat." Eur.J.Pharmacol.333. 187-190 (1997)
• [文献書誌] Kuwasako K.,et al.: "Purification and characterization of PAMP-12(PAMP[9-20])in porcine adrenal medulla as a major endogenous biologically active peptide." FEBS Lett.414. 105-110 (1997)
• [文献書誌] 中尾一和,松澤佑二編(分担)寒川賢治 他: "新内科学体系プログレス2内分泌・代謝疾患(分担)アドレノメデュリンとPAMP" 中山書店, 7 (1997)
• [文献書誌] A.Martinez & F.Cuttita編(分担)K.Kangawa他: "Structure and function of adrenomedullin and PAMP" ISO Press, 13 (1997)