研究概要 |
TIE及びTEKの両者とも、細胞外に免疫グロブリン、EGF,フィブロネクチン様構造をもつ受容体型チロシンキナーゼである。ヒトTIEは、CD34陽性細胞(なかでも、CD38陰性の未分化幹細胞)集団、CD19,CD20陽性のB細胞に発現していることが明かとなった。マウス血液細胞においても、TIE、TEKは、胎生肝、成体骨髄の血液幹細胞に発現しており、ヒトと同様、B220陽性、IgM陽性の成熟B細胞にも発現がみられた。マウス骨髄Lin^-Kit^+ Sca-1^+細胞およびヒト骨髄CD34^+CD38^-細胞という幹細胞に発現がみられた。Lin^-Sca-1^+TEK^+、あるいはTEK^+細胞をストロマ細胞と共培養、または、放射線照射したマウスに移植したところ、骨髄系細胞のほかに、B細胞、T細胞に分化することが証明された。以上のことから、TIE,TEKの結合因子は、幹細胞に作用すると考えられる。また、TIE、TEK受容体は、FLK-1,FLT同様、血管内皮細胞においても発現が認められた。血液細胞は、腹側中胚葉から発生し、血管内皮細胞と共通の祖先細胞(Hemangioblast)をもつと考えられる。Yancopoulosらによって、TEK結合因子として、Angiopoietinが同定された。本分子は、血管内皮細胞の増殖には関与せず、血管のIntegrityに貢献すると考えられ、欠損マウスでは、血管の異常による出血死が観察された。TEK結合因子は、複数存在し、現在、協同研究により、造血細胞に対する機能解析中である。さらに。今年度は、ヒトTEKに対する単クローン抗体を得ることができた。
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