研究概要 |
造血器腫瘍において特異的な染色休転座は特定の病型と深く相関しており、その責任遺伝子は腫瘍化のみならず、造血器細胞の分化、増殖に重要な役割を果たしている。 3年間の成果として、以下のことを報告した。 1.乳児白血病、治療関連白血病に関与する11q23転座切断点領域遺伝子MLLの解析: MLL遺伝子は核に局在し、機能することを特異抗体を作成し証明した。10種類以上存在する転座相手遺伝子に共通する構造上の特徴はないが、細胞質に存在するものとキメラ遺伝子を形成した場合においても核に局在することを明らかにした。また、キメラ遺伝子、分断型MLLを誘導発現する造血器細胞株を樹立し、キメラMLL遺伝子の標的遺伝子としてHox a7,b7,c9が発現制御されることを明らかにした。 2.マントル細胞リンパ腫(MCL)の転座切断点領域遺伝子BCLlの解析: 我々が作成した抗BCL1/cxyclin D1抗体は診断に有用であることw示してきたが、本抗体陰性MCLは、予後良好であった。免疫グロブリン遺伝子のmutationの解析により、両者とも同じ分化段階に位置することを明らかにした。 3.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBL)の解析: 悪性リンパ腫の約半数をしめるDLBLは複数の疾患単位を含んでいる。細胞表面マーカーによるB細胞分化段階に基づいて3つにグループ化できる可能性を示した。B細胞性リンパ腫の主要な転座切断点領域遺伝子BCLl,BCL2,BCL6の遺伝子再構成によるグループ化は困難であった。 4.MALTリンパ腫の転座切断点領域遺伝子の解折: MALTリンパ腫に関連する18q21染色体切断点領域を解析し、遺伝子異常領域を約200kbまでに限定した。 今後、上記解析により明らかになった遺伝子について、抗体作成、遺伝子発現様式の検討によりB細胞の分化、増殖における役割を明らかにしたい。
|