研究概要 |
平成9年度 1.組み換えアデノウイルスの作成 COS-TCP法を用いて,ヒトビタミンD受容体(VDR)遺伝子およびカルシウムセンサー(CaR)遺伝子をGCT promoterによって発現する組み換えアデノウイルスを作成した.108pfu/ml以上の力価を得ることが出来たので,in vitroの感染実験に進行した. 2.副甲状腺細胞への遺伝子導入 初代培養ヒト副甲状腺細胞5×105個に対して,10%ウシ胎児血清存在下にVDRを発現するアデノウイルス(力価1×106pfu/ml)を感染させたところ,48時間後のPTH分泌が有意に抑制された.この抑制は,細胞数で補正しても有意であり,培養液中に存在する正常の1/10の濃度の1,25(OH)2D3が,VDRを過剰発現する副甲状腺細胞に作用したものと考えられた.これらの細胞からのPTH分泌は,さらに1,25(OH)2D3によって濃度依存性に抑制された.また,CaRを感染させた細胞のPTH分泌も,生理的濃度のカルシウムイオン濃度(1.25mM)で著明に抑制を受けた.昨年度の検討では,アデノウイルス感染そのものではPTH分泌にも細胞増殖にも影響を及ぼさないことが証明されているので,これらの効果はアデノウイルスで導入した遺伝子が有効に機能していることを示唆すると考えられた. 現在,in vivoでの機能遺伝子導入を行うために,腎不全ラットの腫大副甲状腺とヌードマウスに移植したヒト副甲状腺に対するウイルス液の直接注入を検討中である.
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