研究概要 |
主なる研究対象とした非可逆性硬化性腎病変は雌性Wistarラットの左腎摘出後に抗Thy-1単クローン抗体(mAb)1-22-3 500μgを1回静注する事により作成した。このモデルは2週後には一度減少傾向を示すものの、以後増加し続け100mg/日を優に越す著名な蛋白尿と早期より持続する尿細管間質障害を含めた増殖性糸球体腎炎像を特徴とする。3週から6週にかけて半月体形成や間質への高度な細胞浸潤と尿細管の変性、拡大を伴った典型的な糸球体硬化性病変が認められ、血清Urea-N,クレアチン値の有意な上昇も認められる。この病変は、抗接着分子阻害剤、抗補体剤、抗線維化剤、ACE阻害薬、漢方薬(紫苓湯)により抑制されることが明らかとなった。 また両腎ラットへのmAB1-22-3 1回静注による可逆性モデルとの種々のパラミターの比較検討を行った。発病初期の糸球体病変の程度に可逆性、非可逆性両群間で著差が認められない一方でTRPM3陽性の活性化マクロファージ並びにα-平滑筋アクチン陽性細胞の間質への浸潤が非可逆性群で著明に認められ、これらが間質病変増悪に関与し、病変初期の間質病変の程度が非可逆性の糸球体硬化性病変誘導の重要な因子であると考えられた。また蛋白尿を減少させ、腎糸球体障害、間質障害を軽減させたACE阻害剤、並びにアンギオテンシン受容体拮抗剤はともにTGF-β、typeI,III collagenのmRNAレベル、並びに蛋白レベルでの発現を抑制していたことから、TGF-β,collagen I,IIIの産生分泌増加が硬化性病変誘導に密接に関与するものと解された。
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