研究概要 |
3-デオキシグルコソン(3-DG)はメイラード反応の活性中間体としてin vitroで同定されたものであり、グルコースに比較してAdvanced Glycation End products (AGE)形成がはるかに速やかで強力である。我々は、3-DGがヒトの血清中に存在することおよび正常者に比較して糖尿病患者、特に糖尿病性腎症患者で増加していることを発見した(BBRC,1993)。さらに慢性腎不全患者、特に透析患者では糖尿病患者より血清3-DG濃度が増加していることを初めて報告した(Nephron,1995)。また我々は、モノクローナル抗AGE抗体(AG-10)を作成し、透析アミロイド組織にAGEが局在することを免疫組織化学により証明した(Kidney Int,1995)。3-DGとβ_2Mをインキュベートすると組織に沈着しているβ_2ミクログロブリン(β_2M)アミロイドと同様にβ_2MがAGE化されることを認めた(Kidney Int,1996)。 我々が作成したモノクローナル抗AGE抗体2種類(AG-10,AG-1)のエピトープを解析したところカルボキシメチルリシン(AG-10) (Kidney Int,1996)とイミダゾロン(AG-1) (Kidney Int,1997)であった。イミダゾロンは3-DGとアルギニンが反応して生成する新しいAGEである。抗イミダゾロン抗体を用いて糖尿病患者の腎臓および大動脈を免疫染色したところ糖尿病性腎症に特徴的な結節病変および動脈硬化病変にイミダゾロンが局在していた(J Clin Inv,in press)。また、透析アミロイドにもイミダゾロンが局在していた(Kidney Int,1997)。イミダゾロンが病変組織中に検出されたことは糖尿病性腎症、動脈硬化および透析アミロイドの発症に3-DGが関与していることを示唆している。
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